住む人の健康や安全を見守ってくれる家。人が常に意識していなくても、中の様子や健康状態を家そのものが把握し、履歴を記録する。そうした取り組みがじわじわと広がっている。その先にあるのは、収集した健康データに基づいた、利便性の高い生活プラットフォームの実現である。
洗面所の鏡の前に立つと、鏡の右端部分に体重、体脂肪率が表示される。一連の健康情報を自動的に収集し、クラウドに蓄積。こうした情報を基にして、体調が悪い時などには、オンラインでかかりつけの医師に相談できる─。センサーの低価格化やスマートデバイスの普及により、このような仕組みづくりが現実味を増している。これから来る社会の姿の一つといっていい。
例えば旭化成ホームズは、静岡県富士市の支社内に「HH2015」という実証棟を設置している。近未来の家に使われる技術を見せようという技術実証である(図1左)。
実証の一つは女性の一人暮らしを想定した空間。洗面台の前の床にヘルスメーターを埋め込み、そこからデータを自動収集。ハーフミラーの裏に設置したタブレット端末にデータを表示させることで、鏡に情報を映し出す。
別のスペースには、不審人物が侵入していないかどうかを自動判別する仕組みを設けてある。具体的には、情報通信研究機構(NICT)が開発した技術を使う。壁などに配置したアンテナから10.5GHz帯の電波を発し、部屋の中にある物体の位置や大きさを把握する。監視カメラに比べ、「監視されている」イメージを抱かせずに済む点が大きなメリットだ。ほかに、元気で活動しているかどうかなど、生活している人の見守りにも活用できる。