2014年3月、世界の大手クラウドベンダーであるAmazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftの3社が相次いでクラウドサービスの大幅値下げを発表して以来、クラウドビジネスの市場は新たなステージを迎えている。「キャズム理論」の創始者として知られるGeoffrey A. Moor氏の提唱する「ライフサイクルイノベーション」理論を元に現在のクラウドビジネスの趨勢とそれに相応する戦略について考察する。

ライフサイクルイノベーションとは

 事業を進める上で、対象となる事業が現在どのような局面にあるのかを把握することは極めて重要である。ライフサイクルイノベーションは、需要市場を「導入市場(Introduction Market)」「成長市場(Growth Market)」「成熟市場(Mature Market)」「衰退市場(Declining Market)」の四つのカテゴリーに区分し、その一つである導入市場のカテゴリーに対して「テクノロジー導入ライフサイクル(Technology Adoption Life Cycle)」を組み入れたモデルで表している(図1)。

図1●カテゴリー成熟化ライフサイクル
図1●カテゴリー成熟化ライフサイクル
出展:Geoffrey A. Moor著「The Category Maturity Life Cycle」
[画像のクリックで拡大表示]

 これは、新たに生まれたテクノロジーが、キャズムを乗り越え、急成長し、コモディティ化し、衰退していく「技術の変遷」と、その技術を利用者として受け入れる市場が成長し成熟し衰退していく「需要市場の変遷」からなるものである。

BtoBクラウドビジネスは成長市場

 クラウドは、このライフサイクルイノベーションのカテゴリー成熟化ライフサイクルのどの局面にいるのだろうか。

 まずは、テクノロジーの側面から見てみたい。「クラウド・コンピューティング」という言葉は、2006年8月の米国サンディエゴで開催された「Search Engine Strategies Conference」でのGoogle CEO(当時)Eric Schmidt氏の発言を起源とする。データ、ソフトウエア、ハードウエア、プログラムなどをインターネットのサーバー群に移行し、それらを必要なときに必要なだけ利用するコンピュータの利用形態を表している。