最新版のPMBOKではステークホルダーマネジメントが知識エリアに格上げされた。そこに盛り込まれた知見はどんなものか。PMは何をすべきか。PMBOKの推進団体、PMI日本支部の翻訳責任者が解説する。

 2012年12月に、PMBOKガイド注1の最新版である第5版が発表されたのをご存じだろうか。第5版では、10番目の新しい知識エリアとして「ステークホルダーマネジメント」が新設された。タイムマネジメント、コストマネジメント、品質マネジメントといったプロジェクトマネジャー(PM)の主要な活動と同列にステークホルダーマネジメントを扱う、というわけだ。

注1)PMBOKガイド:正式名称は「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」。米Project Management Institute(PMI)が作成し発行している。

 知識エリアの新設は、1996年にPMBOK第1版が発行されてから1度もなかった。PMBOKの歴史において画期的な出来事であり、それだけステークホルダーマネジメントの重要性が高まっていることを意味する。

 本稿では、PMBOK第5版のステークホルダーマネジメントの内容を解説する。以下で、PMBOKにおけるステークホルダーマネジメントの位置付けの変遷とステークホルダーマネジメントの四つのプロセスについて記述する。

 第5版ではこのほか、プロジェクトマネジメントの国際標準「ISO 21500」との整合が取られた。これについては、41ページの別掲記事で紹介する。

人間系の要素が求められている

 初めに、PMBOKにおいてこれまでステークホルダーマネジメントがどのように位置付けられてきたのかを説明しよう。

 ステークホルダーに関する記述は、1996年に発行されたPMBOK第1版からあった。ただし第1版では、ステークホルダー間の対立をマネジメントするように記述されている程度だった。