ステークホルダーともめるとはどういうことか。PMはどんな決断を迫られるのか。これをリアルに体感してもらうため、二つのストーリーと問題を用意した。問題を解いて、PMとしての経験値を上げてほしい。

 ステークホルダーマネジメントは、感情を持つ人であるステークホルダーを相手にする仕事です。理屈が通るとは限りません。しかも各ステークホルダーは、所属部署の利害を抱えています。そのため、所属部署を代表する立場として鋭く対立することがあります。

 その上、ステークホルダーが近年ますます多彩になり、ステークホルダーマネジメントの難易度が上がっています。開発チームや外部のベンダーを除いても、関係する利用部門がいくつも存在します。さらに、監査部門、内部統制部門、リスク管理部門、グループ会社、海外拠点、取引先などもステークホルダーに含めるケースがあります。

 プロジェクトに関わる立場はさまざまで、当然、それぞれの関心事や優先事項はバラバラです。ベテランのプロジェクトマネジャー(PM)であっても、毎回細心の注意を払ってなんとかくぐり抜けているのが実情なのです。

 ここでは、ステークホルダーマネジメントについて、二つの架空ストーリーと問題を示します。どちらもステークホルダーにどう働きかけるかで、PMが難しい判断を迫られる場面です。問題は三択式で、あなたがPMとしてどんな行動を取るのかを選んでもらいます。実際のステークホルダーマネジメントを経験してみてください。

問題1 三つどもえの対立

 新管理会計システム構築プロジェクトの序盤、要件検討会議(検討会)は、前回から引き続き紛糾していた。争点は人件費の精度と確定タイミングだ。

 会社としては、利益を精緻に把握するため、確定した人件費をできるだけ早くつかみたい。しかし精緻さを追求すると、作業がどんどん煩雑になり、そのために確定タイミングが遅れる。精度とタイミングの折り合いをどのように付けるか、という点で、議論が平行線をたどっていた。その様子をご覧いただこう。