生活協同組合コープこうべ(神戸市)は、豆腐や総菜など冷蔵が必要な日配品と呼ばれる食品の自動発注システムを、全100店に導入した。店舗での発注作業を省力化し、品切れによる販売機会ロスなどを抑えて経営改革を狙う。発注担当者の経験や勘を反映して予測精度を上げ、検討開始から実に3年かけて安定運用にこぎ着けた。

 スーパーなど小売業にとって、日持ちしない食品の廃棄ロスや値引き販売、欠品による販売機会ロスをどう抑えていくかは経営改善の大きな課題だ。食品メーカーや生産者の段階では、欠品による販売機会ロスを恐れて多めに原料を用意し、ある程度日持ちする商品は作り置きもする。その分は製造原価に跳ね返る。

 欠品とロスは裏表の関係にある。在庫が増えれば欠品が減るものの、増やし過ぎればロスが増える。こうしたロスは一般的に小売り段階で3~4%、川上のメーカーで10%近くにもなるという。

写真1●コープこうべ コープ行基(兵庫県伊丹市)の店内
写真1●コープこうべ コープ行基(兵庫県伊丹市)の店内
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 店舗で需要を正確に予測し、メーカーが売れる分だけ製造できれば、仕入れ価格を抑えて消費者に還元できる。そんな壮大な構想に取り組んだのが、兵庫県を地盤とするコープこうべ(神戸市)。卸売大手の日本アクセス(東京・品川)と、物流・流通システムの開発などを手がけるリンク(大阪市)の3社が協力して、需要予測型の自動発注システム「SINOPS(シノプス)-R」を導入した。

発注作業を最大9分の1に軽減

 対象となる商品は、牛乳やアイスクリーム、豆腐、漬物など日配品の1600~1800アイテム。いずれも賞味期限が短く、早いものは2日間しかない。そのため全品目の3分の1は毎日、各店舗の担当者が発注作業をしている。

 日配品の発注は、ロスや欠品に直結しやすいだけに責任が重い。難易度が高いため、担当者の経験やスキルによって、店舗間で発注精度にばらつきがあった。担当者が変われば、最初から教育が必要だった。自動発注によって発注業務の負担を軽減して、全100店舗の発注精度も底上げが図れる。

 リンクが開発した自動発注システムは、レジを通過した顧客1000人当たり、商品が何個売れたかを示す「PI値」と呼ばれる数値を使う。1000人が来店して商品が100個売れた場合のPI値は10%という具合だ。それをもとに、過去8週間のPOS(販売時点管理)データから需要を予測して自動発注する。

 シノプス-Rは売り場の作り方や価格による需要の変動に対応する機能を備える。例えば同じ価格でも、狭い陳列棚に並べる場合と平台で大きく広げて売る場合では、顧客の反応が変わる。それぞれに対応して異なるPI値を設定し、需要を予測する。

 さらに、ある商品を特売すると類似商品の売り上げが減る場合を考慮して、影響し合う類似アイテムをグループ化。特売商品による非特売商品への影響を加味して在庫日数の基準を設定する。こうして日々、「明日は何個売れる」という予測データをもとに、店舗に発注の指示を出す発注勧告書を提供する。