「国や地方自治体から発注される官公需入札(以下「入札」)案件に参加をしたことがありますか?」
この質問に対し、多くのIT企業が「NO」と返答するのではないだろうか。「入札=ダム建設や道路工事」というイメージが強く、「入札は普段関わることのない疎遠なもの」と考えている企業も多いだろう。
しかし、その考えは改めた方がいい。ITがインフラとなった現在では、国や地方自治体といった、いわゆる公共機関でも当然ながらWebサイトを保有しているし、職員はPCを使って仕事をしている。これらのWebサイトの開発、運用、保守や職員のPC購入などの全てが入札案件となり民間企業に発注されている。この入札案件の情報は全てWebサイトで公開されているのだ。
こうした公開情報を入手した企業は入札に参加し、数百万円から数千万円といった規模の仕事を受注する権利をつかむことになる。落札できれば公共機関との取引実績ができるので、社会的信用も増すかもしれない。今まで入札案件に見向きもしなかった企業があれば「売上と信頼確保の企画をみすみす逃している」ともいえる。
筆者は2008年より「入札情報速報サービスNJSS(エヌジェス)」を運営しているうるるに所属している。今回の記事では、2016年のデータを基に入札の実態について解説する。多くのIT企業にとってビジネスを拡大するヒントになるはずだ。
そもそも入札とは何だろうか
これまで注目していなかった企業だと、入札について曖昧な知識しかないかもしれない。まずは、入札の基本と動向について押さえておこう。
入札とは、公共機関がサービスや物品の購入や工事の発注をする際、発注先の企業を選定するために実施する取り組みである。
例えば、東京都庁でシステム開発が必要になったとする。東京都庁は、その案件をWebサイトなどで公開しなければならない。案件を受託したい企業は東京都庁に対し見積金額や企画を提示し、内容が一番良い企業に対して東京都庁は案件を発注をする。この一連の流れが、いわゆる入札だ。
入札情報速報サービスNJSSで調べたところ、全国の約6500の公共機関から民間企業へ案件が発注されている。その額は、年間で23兆円にもなる。