日本教育工学協会(JAET)は2017年11月24日~25日、「第43回 全日本教育工学研究協議会全国大会 和歌山大会」を開催した。「ICT活用で創造する主体的・対話的で深い学び」をテーマに、小中学校での公開授業をはじめ、ICT(情報通信技術)を活用した教育に関する研究発表やシンポジウムなどが実施された。これらの中から、和歌山市内にある中学校と小学校で公開された授業をレポートする。

IoTを利用した“新製品”を「MESH」で開発

 和歌山大教育学部附属中学校の技術の授業では、3年生が「MESH」を使ってプログラミングと“新製品”作りに挑戦した。

 ソニーが開発したMESHは、ライターほどの大きさの小型ブロックにカメラやセンサーといった機能を内蔵し、「iPad」などを使って作成したプログラムでコントロールできる。いわば、スマートな電子ブロックのような製品だ。例えば、人感(赤外線)センサーのブロックとブザーを内蔵したブロックを組み合わせ、「センサーが人の動きを感知したら離れた場所にあるブザーを鳴らす」といったシステムを簡単に作れる。ブロックはバッテリーを内蔵しワイヤレスで通信するため、IoT的な使い方も容易だ。

 技術の授業では、「MESHを使ってホームセキュリティを実現する」という課題が出され、生徒たちはグループで実現方法を考える。いきなりプログラミングを始めるわけではなく、課題に対して「安全のために何をすべきか」「そのためにはどんな機能が必要か」「使用する場所や条件は?」といった具体的な実現方法を考え、専用のシートに記入していく。

プログラミングの前に、必要な機能などを「レシピシート」に記入していく。「レシピ」という名が付いているのは、MESHのプログラムをそのように呼ぶため
プログラミングの前に、必要な機能などを「レシピシート」に記入していく。「レシピ」という名が付いているのは、MESHのプログラムをそのように呼ぶため
[画像のクリックで拡大表示]

 次に、MESHの機能が1枚の紙に一つずつ書かれたカードを使ってアルゴリズムを検討する。レシピシートに書いた内容をどのようにしたら実現できるか、カードを順に並べて処理の流れを作るわけだ。こうした手順を踏むことが、考えを整理して正しいアルゴリズムを考える手助けになっているようだ。

 アルゴリズムが出来たら、それを実際のプログラムに落とし込んでいく。MESHのプログラミングアプリは、タグのような命令をドラッグしてつないでいくだけなので難易度は低い。今回の授業に参加した生徒はすでに数回の経験があるため、プログラミングもおおむねスムーズに進んでいるようだった。