写真●スタンフォード大学心理学者のケリー・マクゴニガル氏。著書『スタンフォードの自分を変える教室』は20カ国で刊行され、日本でも60万部を売り上げた。2015年10月22日に『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を発売
写真●スタンフォード大学心理学者のケリー・マクゴニガル氏。著書『スタンフォードの自分を変える教室』は20カ国で刊行され、日本でも60万部を売り上げた。2015年10月22日に『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を発売
撮影:山田 愼二
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 前編に引き続き、スタンフォード大学心理学者のケリー・マクゴニガル氏のインタビューをお届けする。マクゴニガル氏の執筆した『スタンフォードの自分を変える教室』は20カ国で刊行され、日本でも60万部を売り上げるなど話題を集めた。2015年10月22日に新刊『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を発売。様々な研究データを基に、ストレスに対する考え方を変えるべきと説いている。

 2015年12月から50人以上の従業員がいる全ての事業所にストレスチェックの実施が義務づけられる。従業員のストレス管理は企業の責務としてとらえられる時代に突入するということだ。

経営陣と従業員のストレスに対する考え方の乖離はなぜ起こる?

 従業員のストレス管理に対し、法律の施行に関係なく積極的に取り組む企業は数多くある。だが、経営陣が良かれと思って実施した施策が、決して従業員にとってストレス解消につながらないケースも多々ある。こうしたギャップはなぜ起こってしまうのか。

 「私は経営陣や人事部といかに従業員のストレスをいかに減らすかというディスカッションをします。気付いたのは、どの企業も自社の社員のストレスを軽減するために、より多くの人的リソースを投入したり、費用を使ったりといった構造的な改革に抵抗感を覚えているということです」

 「どちらかというと目先の社員の文句やクレームに対して、一つひとつ解決しようとルールを定める企業が多い。しかし、そういうことではない、と思うんです。職場ではない部分、むしろ産休や両親の介護など、サポートに注力するといったことの方が効果的です。経営者はなかなかそこまで考えが至らないんですね」

 経営者の多くはストレスの原因は職場にこそ存在し、それを取り除くことに終始しようとしているが、逆にストレスによる悪影響の原因を作ってしまうことにもなりかねない。従業員が何を大事に思っているか、経営者はそこに目を向けなければならないということだろう。