写真●スタンフォード大学心理学者のケリー・マクゴニガル氏。著書『スタンフォードの自分を変える教室』は20カ国で刊行され、日本でも60万部を売り上げた。2015年10月22日に『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を発売
写真●スタンフォード大学心理学者のケリー・マクゴニガル氏。著書『スタンフォードの自分を変える教室』は20カ国で刊行され、日本でも60万部を売り上げた。2015年10月22日に『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を発売
(撮影:山田 愼二)
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 毎年大規模な世界的講演会を開く非営利団体「TED」。2013年、TEDで「ストレスと上手につきあう方法」についてスピーチをしたケリー・マクゴニガル氏の動画は1000万回再生に近づきつつある。彼女が執筆した『スタンフォードの自分を変える教室』は20カ国で刊行され、日本でも60万部を売り上げるなど話題を集めた。

 マクゴニガル氏はボストン大学で心理学、マスコミュニケーションを学び、スタンフォード大学で健康心理学の博士号を取得。現在はスタンフォード大学の心理学者で、心理学、神経科学、医学の最新の知見を用いて、人々の健康や幸福、成功、人間関係の向上に役立つ実践的な戦略を提供する「サイエンス・ヘルプ」の第一人者として活躍している。

 マクゴニガル氏は2015年10月22日に新刊『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を発売。おりしも日本では2015年12月1日から従業員数50人以上の全ての事業所にストレスチェックの実施を義務付ける「労働安全衛生法の一部を改正する法律(通称:ストレスチェック義務化)」が施行される。

 「ストレスは害である」。様々な研究データでこの固定概念を覆す持論を展開するマクゴニガル氏に話を聞いた。

ストレスを力に変えるとはどういうこと?

 体調を崩して病院に行っても、「ストレスが原因ですね」と煙に巻かれるような説明を医者から受け、薬を処方されて終わることが多々ある。そもそもストレスが全くない生活を送っている現代人はほとんどいないにもかかわらずだ。だが、一方で「武者震い」のように、ストレスが逆に力の源となることを実感するケースもある。マクゴニガル氏はこうした身体の変化にこそ注意を払うべきだという。

 「ストレスの症状は人によって異なります。お腹が痛くなる人がいれば、頭が痛くなる人もいる。汗が出る人もいますよね。ストレスは大切なものが脅かされているときに感じるもの。注目した方がいいよと身体が教えてくれているんです」

 「武者震いもその一つです。アドレナリンが出て身体が震えるほど興奮するというのもシグナル。ただ、ストレスとうまくつきあうために大事なのは、身体が見せてくれるシグナルに自身が好奇心を持つことなんです」

 マクゴニガル氏に増え続ける現代人のストレスの原因について聞いてみたら、意外な答えが返ってきた。