韓国サムスン電子が2016年9月に開催した自社イベント「SSD Global Summit 2016」で発表された最新のSSD「960 EVO」の評価用サンプルを入手した。

 同時に発表されたフラッグシップの「960 PRO」と同様、M.2フォームファクター、およびPCI Express 3.0 x4インタフェース、NVMeコマンドプロトコルを採用するが、こちらはリーズナブルな価格設定のメインストリームモデルだ。

 SSDでは、ハイエンドクラスを中心に2.5インチからM.2へ、Serial ATA 6Gbps/AHCIからPCI Express/NVMeへと世代交代が徐々に進んでおり、最近はメインストリームでもM.2/PCI Express/NVMeを採用した製品が増えてきている。この960 EVOもその流れを汲む製品の一つだ。製品版の発売に先駆けて、その実力を確認しておこう。

960 EVOのサンプル。上位の960 PROや先代の950 PROと同様に黒い基板を採用している。
960 EVOのサンプル。上位の960 PROや先代の950 PROと同様に黒い基板を採用している。
(撮影:鈴木 雅暢、以下同じ)
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スペックをチェック

 公開されている960 EVOのスペックは別表にまとめた。3200Mバイト/秒のシーケンシャルリードをはじめ、メインストリームモデルとしては突出した内容で、先代のフラッグシップである950 PROとの同クラス容量と比較しても、性能面では全ての面で上回っている。

 新規設計の「Polaris」コントローラー、サムスン製の第3世代V-NANDを採用する点は、上位の960 PROと同じ。ただ、960 PROがMLC(マルチ・レベル・セル)なのに対し、この960 EVOではTLC(トライ・レベル・セル)を採用している。

 MLCでは1つのメモリーセルに2ビットの情報を記録するのに対し、TLCでは3ビットの情報を記録できるため、低コスト化、大容量化に有利だ。一方、読み書き時の電圧は、MLCの4段階に対し、8段階に調整する必要があり、性能、特に書き込み性能では不利がある。本製品ではその本質的な不利をカバーするため、「Intelligent Turbo Write」という技術を導入している。これについては後ほど詳しく解説する。

表1●960 EVOのスペック
容量250Gバイト500Gバイト1Tバイト
フォームファクターM.2(2280)
インタフェースPCI Express 3.0 x4/NVMe 1.2
コントローラー 5コア Polaris コントローラー
NAND第3世代MLC V-NAND
キャッシュLPDDR3 512MバイトLPDDR3 1Gバイト
シーケンシャルリード3200Mバイト/秒
シーケンシャルライト1500Mバイト/秒1800Mバイト/秒1900Mバイト/秒
4K、QD32(4スレッド)
ランダムリード
33万IOPS38万IOPS
4K、QD32(4スレッド)
ランダムライト
30万IOPS36万IOPS
4K、QD1(1スレッド)
ランダムリード
1万4000IOPS
4K、QD1(1スレッド)
ランダムライト
5万IOPS
アイドル時消費電力40mW
動作時平均消費電力リード5.3W
ライト4.2W
リード5.4W
ライト4.4W
リード5.7W
ライト4.8W
保証期間3年間
または100TBWまで
3年間
または200TBWまで
3年間
または400TBWまで
表2●新旧250Gバイトクラスのスペック
960 EVO950 PRO
容量250Gバイト256Gバイト
フォームファクターM.2(2280)
インタフェースPCI Express 3.0 x4/NVMe
コントローラー5コアPolarisコントローラー3コアUBXコントローラー
NAND第3世代TLC V-NAND第2世代MLC V-NAND
キャッシュ512Mバイト LPDDR3
シーケンシャルリード3200Mバイト/秒2200Mバイト/秒
シーケンシャルライト1500Mバイト/秒900Mバイト/秒
4K、QD32ランダムリード33万IOPS27万IOPS
4K、QD32ランダムライト30万IOPS8万5000IOPS
4K、QD1ランダムリード1万4000IOPS1万1000IOPS
4K、QD1ランダムライト5万IOPS4万3000IOPS
アイドル時消費電力最大40mW最大70mW
動作時平均消費電力リード5.3W
ライト4.2W
5.1W
保証期間3年間または
100TBW
5年間または
200TBW