毎年、オープンソースのオフィスソフト「LibreOffice」の関係者が世界中から集まる「LibreOffice Conference」が開催されます。2017年は、イタリア・ローマで10月11日から13日までの3日間、開催されました。参加者は、200人以上となりました。

 会場は、ローマの観光名所であるコロッセオの近く。古代ローマの政治や経済の中心だったフォロ・ロマーノのすぐそばでした。3つの建物に別れた会場はどれも立派で、コロッセオなどを横目に会場に通うことになりました。

メイン会場前の様子
メイン会場前の様子
(撮影:榎 真治、以下同じ)
[画像のクリックで拡大表示]

 イタリアでは、政府や自治体、学校など幅広くLibreOfficeが利用されており、ローカルコミュニティの動きも活発です。LibreOfficeコミュニティによって設立運営されている非営利団体「The Document Foundation」(TDF)の取締役議長であるMarina Latini氏や、TDFの立ち上げから関わり、現在は認定担当スタッフであるItalo Vignoli氏など、多くのメンバーがイタリアで活動しています。

 開発や品質保証、ほかのOfficeソフトからの移行事例、コミュニティなど、様々なトピックについて、セミナーやワークショップ、ミーティングなどが行われました。3日間で約80のセッションがありました。また今年は、国際標準のファイル形式であるODF(OpenDocument Format)の国際会議である「ODF plugfest」も同時開催でした。

英国の医療組織やフランス自治体で活用の動き

 LibreOfficeの移行事例については、各国から9つの発表がありました。政府や自治体を中心に、LibreOfficeを利用するケースが多いようです。

 英国のIT企業Collabora Productivity(以下、Collabora)のゼネラル・マネージャーMichael Meeks氏は基調講演で、イタリアのある銀行で約2万ユーザーがLibreOfficeを利用し、同社が有料サポートを提供しているという事例を紹介しました。

 また別のセッションで同氏は、イギリスの北アイルランドにある病院などを管理する組織が、約8500ユーザーを対象にLibreOfficeへの移行を進めている事例にも言及しました。Collaboraが提供するソースコードレベルのサポートと長期利用バージョン(ロングタームサポート)の利用を合わせると、年間5万9000ポンドかかるそうです。それに対して、Microsoft Officeはソースコードレベルサポートなしで年間94万2500ポンドと、約16倍もかかるという試算をしているそうです。

 大幅なコストカットとサポートレベルの向上が期待できそうです。ソースコードを修正した例としては、Microsoft Officeの古いチェックボックスをコピーペーストした時の不具合や、LibreOfficeの一つ「Writer」の表の罫線の一部が表示されない問題、ピボットテーブルのパフォーマンス向上とXLS/XLSX形式ファイル読み込みの改善、透かしを挿入するダイアログの実装などがあります。相互運用性に関わる部分を中心に対応していることが紹介されました。

イギリスでの導入事例を語るMichael Meeks氏
イギリスでの導入事例を語るMichael Meeks氏
[画像のクリックで拡大表示]