ベトナムへのオフショアが盛んになっている最大の要因は、中国における人件費の高騰にある。コストメリットを享受できないと判断した日系企業が、ベトナムへのシフトチェンジに動き出したわけだ。

 「ネクストチャイナ」の恩恵に沸くベトナムだが、同国の最大都市ホーチミンに拠点を構えるインディビジュアルシステムズの浅井崇氏代表取締役は、「中国の仕事がベトナムに回ってきたからといって、素直には喜べない」と複雑な心境を吐露する(写真1)。

写真1●インディビジュアルシステムズの浅井崇氏代表取締役
写真1●インディビジュアルシステムズの浅井崇氏代表取締役
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 中国からベトナムへのシフトチェンジが盛んになった2013年の状況を見ると、「人月単価40万円が日系企業から見た際の上限だということが明白になった。ベトナムでもこの単価を超えると、厳しくなる」(浅井代表取締役)からだ。「保守的に見ても、猶予期間は5年ではないか」と浅井代表取締役は見る。

 エボラブル アジアの吉村英毅代表取締役社長も認識は同じだ。「中国の人月単価は平均4300ドル程度と言われている。日本企業はそれを割高だと感じてしまっている。一方、インドは平均4700ドルとされるが、リーズナブルだと思えるコストパフォーマンスを発揮できているから世界中の企業が発注している。ベトナムはインドのようになれるか。それが肝だ」(吉村社長)と、力を込める。

 “安さ”だけを売りにしていては、いずれ淘汰されてしまう。足元のトレンドが好調であっても、危機感を覚えているベトナムIT企業は決して少なくはない。こうした企業は、既に“安さ”以外の武器を身に付けるため、次の一手を打ち始めている。