ICT(情報通信技術)を活用した教育に関する研究発表と交流のイベント「PCカンファレンス北海道2017」が、2017年10月28~29日に北海道室蘭市の室蘭工業大学で開催された。主催はPCカンファレンス北海道2017実行委員会で、コンピュータ利用教育学会(CIEC)と全国大学生活協同組合連合会北海道ブロックが共催する。
カンファレンスの分科会では、初等教育から大学まで幅広いテーマでICT活用教育の研究成果が発表された。そのうちの一つ、「VarsityWave eBooksによる教科書閲覧Log とその分析~閲覧Logからの知覚認知特性抽出の試み~」では、電子教科書の閲覧履歴を分析することで、生徒の学習スタイルの違いを見つけ出す試みが報告された。
早稲田大学高等学院は電子教科書の導入に当たり、細かなログデータの記録と収集が可能なプラットフォーム「VarsityWave eBooks」(運営は大学生協事業センター)を採用。そこに、独自作成している情報科の教科書をPDF化して登録し、電子教科書を作成した。生徒が電子教科書を開くと、秒単位で閲覧行動が記録される。このデータを収集・加工し、分析した。
ページ送りから二つのパターンを発見
電子教科書のページをめくる速度やページの位置といったページ遷移(ページ送り)の履歴を分析すると、特徴的な使い方として大きく2つのパターンが見られた。(1)短時間でページを進めていくタイプ、(2)指示されたページを順に開いていくタイプである。この結果から、過去の知覚認知特性と学習スタイルとの関係性を基に、該当する生徒の学習スタイルを推測した。
(1)の短時間でページを移動する生徒は「教員の指示に大まかには従うが、自分のペースで要領良く学習していくタイプ」、(2)の順に読む生徒は「教員の指示に従って学習し、失敗を回避するタイプ」と推測した。実際、担任の教員に生徒の学習態度を確認すると、教科書の読み方と生徒の特性、学習のスタイルには、ある程度の整合性があることが分かったという。
今回の研究で教科書の読み方と学習スタイルに関連性があることは分かったものの、詳細な科学的分析は今後の課題だという。将来は、電子教科書の閲覧履歴から生徒の学習スタイルを分析し、授業の進め方や学習のサポートに生かすことが期待できる。