「デジタルコックピット」「次世代コックピット」――。こんな言葉で表現される、運転席周辺に関する新構想がある。
車内のあちこちに置かれたディスプレーや車内外の状況を検出する多数のセンサーなどを利用しながら、運転や乗車の体験を向上させようというものだ。例えば車外や車内に向けたカメラ、障害物検知用のレーダー、ダイヤルやスイッチ、タッチパネル、マイク、GPS、加速度センサー、車両情報などによってクルマや乗員の状況や意図を把握。スピードメーター、バックミラー代わりのカメラ映像、地図、エンターテインメント、安全のための警告などの多様な情報を、クルマや乗員の状況に応じて動的に複数のディスプレーやスピーカーで出力する。こうした構想に沿った試作システムを、多くの自動車メーカーや部品メーカーが提案している(図1)。
車載情報端末といえば、現在のカーナビやカーオーディオのような箱型の筐体をイメージすることが多いだろう。次世代コックピット構想では、箱型の筐体で完結していた機能がクルマ全体に散らばり、クルマ全体が一つの情報端末として動作し始める。
次世代コックピット構想が実現するころには、車載情報端末はクラウドと制御システム、センサー群、そしてユーザーのハブとなるだろう。車両内外の情報をクラウドに上げたり、クラウドからの指示に応じて車両を制御したりといった役割を果たすことになる(図2)。
そのとき、クルマ向けITサービスの市場は大きく広がる。情報提供や娯楽の分野に留まらず、天候や道路の状況に合わせた運転操作のアシスト、複数車両の協調制御による交通流の円滑化といった新しいアプリケーションを実現できる。