韓国サムスン電子が2016年9月に開催した自社イベント「SSD Global Summit 2016」において、発表した最新SSD「960 PRO」が近日発売される。今回はいち早く512Gバイトモデルの評価用サンプルを入手。クライアントPC向けとして最新、最高峰といえるSSDの実力を検証した。
評価の解説の前に、クライアントPC向けSSDの現状についてまとめておこう。クライアントPC向けSSDは、完成品のPCとしては主にノートPCで採用されている。データを記録した円盤を高速回転させるHDDとは異なり、SSDは半導体であるNAND型フラッシュメモリーを記録媒体に利用する。機構上、騒音や振動は発生せず、HDDと比べて衝撃にも強い。何よりも、HDDより圧倒的にデータの読み書きが速い。
SSDが登場してからしばらくは、ノートPC向けの2.5インチHDDと互換性のある形状(フォームファクター)やインタフェース(Serial ATA 3Gbpsまたは6Gbps、プロトコルはAHCI)が主流だった。ところが、SSDの性能向上やノートPCの薄型化への強い要求により、HDD互換を捨て、SSDの特徴を生かせるフォームファクターやインタフェースが登場してきた。現在、高性能をうたうSSDは、薄型の基板がむき出しになっている「M.2フォームファクター」や、PCI Express 3.0 x4インタフェース、NVMe(NVM Express)プロトコルを採用している。
サムスンが発表した「960 PRO」も、そうしたフォームファクター/インタフェースを採用するSSDの一つだ。サムスンは、960 PROを従来の「950 PRO」の後継となる、コンシューマー向けのフラッグシップモデルと位置付けている。先代モデルから性能を大幅に向上させただけでなく、NVMe世代のSSDで課題として浮上した発熱の対策も施した、という触れ込みだ。
仕様上は消費者向けSSDで最高クラスの性能
サムスンが公開した960 PROのスペックを表にまとめた。
容量 | 512Gバイト | 1Tバイト | 2Tバイト |
---|---|---|---|
フォームファクター | M.2(2280) | ||
インタフェース | PCI Express 3.0 x4/NVMe 1.2 | ||
コントローラー | 5コア Polaris コントローラー | ||
NAND | 第3世代MLC V-NAND | ||
キャッシュ | LPDDR3 512Mバイト | LPDDR3 1Gバイト | LPDDR3 2Gバイト |
シーケンシャルリード | 3500Mバイト/秒 | ||
シーケンシャルライト | 2100Mバイト/秒 | ||
4K、QD32 (4スレッド) ランダムリード | 33万IOPS | 44万IOPS | |
4K、QD32 (4スレッド) ランダムライト | 33万IOPS | 36万IOPS | |
4K、QD1 (1スレッド) ランダムリード | 1万4000IOPS | ||
4K、QD1 (1スレッド) ランダムライト | 5万IOPS | ||
アイドル時消費電力 | 40mW | ||
動作時平均消費電力 | リード5.1W ライト4.7W | リード5.3W ライト5.2W | リード5.8W ライト5W |
保証期間 | 5年間または 400TBWまで | 5年間または 800TBWまで | 5年間または 1200TBWまで |
シーケンシャル(順次)リード3500Mバイト/秒、シーケンシャルライト2100Mバイト/秒など、コンシューマー向けSSD、およびM.2フォームファクターのSSDとしては極めて優れた仕様だ。先代の950 PROとの同容量で比較してみても、ランダムアクセス性能も含め、全ての面で大きく改善されていることが分かる。
960 PRO | 950 PRO | |
---|---|---|
容量 | 512Gバイト | 512Gバイト |
フォームファクター | M.2(2280) | |
インタフェース | PCI Express 3.0 x4/NVMe 1.2 | PCI Express 3.0 x4/NVMe |
コントローラー | 5コア Polaris コントローラー | 3コア UBX コントローラー |
NAND | 第3世代MLC V-NAND | 第2世代MLC V-NAND(発表時) |
キャッシュ | LPDDR3 SDRAM 512Mバイト | |
シーケンシャルリード | 3500Mバイト/秒 | 2500Mバイト/秒 |
シーケンシャルライト | 2100Mバイト/秒 | 1500Mバイト/秒 |
4K、QD32ランダムリード | 33万IOPS | 30万IOPS |
4K、QD32ランダムライト | 33万IOPS | 11万IOPS |
4K、QD1ランダムリード | 1万4000IOPS | 1万2000IOPS |
4K、QD1ランダムライト | 5万IOPS | 4万3000IOPS |
アイドル時消費電力 | 40mW | 70mW |
動作時平均消費電力 | リード5.1W ライト4.7W | 5.7W |
保証期間 | 5年間または 400TBWまで | 5年間または 400TBWまで |
960 PROはコントローラーを一新。「Polaris」と呼ぶ新設計の5コアコントローラーを採用している。5コアのうち1コアをインタフェースの処理専用に割り当てているという。
NANDフラッシュメモリーにはサムスン製の「第3世代V-NAND」を採用する。このV-NANDは、シリコンウエハー上に垂直方向にメモリーセルを積層する3次元構造のNANDフラッシュメモリー。第1世代の24層、第2世代の36層に対し、第3世代では48層に増えている。