ネット動画配信大手の米ネットフリックス(Netflix)は2017年10月5日、米国国内での利用料金の値上げを明らかにした。スタンダードプランを現在の月額9.99ドル(約1200円)から、1ドル値上げして10.99ドルに、プレミアムプランを2ドル値上げして11.99ドルにした。同社が米国で料金を値上げする理由として、独自コンテンツの追加などを挙げている。

全世界で1億人突破のNetflix加入者

 Netflixが2017年7月17日に発表した第2四半期(2017年4〜6月)業績によると、米国での加入者は微増の5,192万人。海外市場での加入者数が5,203万人。前期よりも414万増と大きく伸び、全世界での加入者数がついに1億人を突破した。Netflixは日本でもおなじみだが、全世界130か国で事業を展開しており、1か国の平均値とすると、やはり米国市場が同社にとって重要であることは変わりない。

表1●Netflixの四半期ごとの加入者推移
表1●Netflixの四半期ごとの加入者推移
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 Netflixの主な収入源も米国だ。2017年第2四半期(2017年4〜6月)の売上高は、全世界で前年同期比32%増の27億8,500万ドル(約3,000億円)で、純利益は61%増の6,600万ドルだった。そのうち米国での売り上げが15億500万ドルと、Netflix全体の収入の54%を占めている。利益を出しているのも米国だ。米国以外の海外では、まだマーケティング費用やコンテンツ投資がかさんで赤字だ。米国で稼いだ収益を海外に投資している格好だ。

 現在、5000万人以上の加入者がいる米国で1ドル値上げしただけでも、収入は単純計算でも月に5000万ドル(約56億円)以上になる。そのため今回の値上げが同社に与えるインパクトは相当に大きい。

表2●Netflixの四半期ごとの業績推移
表2●Netflixの四半期ごとの業績推移
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コンテンツが命脈のSVOD

 NetflixやHulu、Amazon Primeのような有料課金動画(SVOD:Subscription Video On Demand)を提供する事業者にとって、コンテンツは収益の命脈だ。

 Netflixは今までも多額のコストをかけてオリジナル作品を制作してきた。それらが世界中で多くの人を魅了している。特に2017年はカンヌ国際映画祭で、Netflixのオリジナル映画がコンペティション部門に選出された。この作品は映画館で上映されずにネットのみでの配信がノミネートされたことへの反発や議論を巻き起こすなど、映画界にも影響を与えた。だがネットであれ映画館であれ、良質なコンテンツが人々を魅了することに変わりはない。映画業界の専門家以外の一般の視聴者にとっては「その作品が見たいから映画館に行く」か「その作品を見るためにNetflixに加入する」という違いだけだ。