改正案の目玉の一つが「匿名加工情報」。ビッグデータの有効活用が狙いである。

 だが、取り扱いには細かいルールに沿う必要がある。個人データをどんな目的で利用するか、あらかじめ検討しておくのが必須だ。

匿名加工情報活用のハードルは高い

 実際にどのような匿名加工情報を作成できるのか。参考になるのは、経済産業省が野村総合研究所に委託して2015年3月に公開した「パーソナルデータ利活用に関するマルチステークホルダープロセスの実施方法等の調査事業」と題した報告書だ。

 報告書では、クレジットカード会社が集めたカード利用者の購買データを利用したサービスを想定。データ活用とプライバシー保護を両立させるため、企業や消費者らの意見に基づいてルールを作る「マルチステークホルダープロセス」と呼ばれる手法を試して、技術者や法律家らが専門的な見地から匿名加工情報への加工方法やデータ保護の規律を検討している。

 そこで判明したのは、匿名加工情報を活用するには、ハードルが意外に高いことだ。

 調査に協力した菊池浩明 明治大学総合数理学部教授によると、匿名加工情報の活用法として検討した七つの事例のうち、「認められたのは条件付きで一つだけだった」と話す。