農業人口の減少や就農者の高齢化、耕作放棄地の増加など日本の食の原点である農業が岐路に立たされている。「もはや待ったなし」。内閣府の規制改革会議 農業ワーキング・グループの専門委員を務めるファーム・アライアンス・マネジメント代表取締役/松本農園プロジェクトマネージャーの松本武氏は日本の農業の置かれた状況をこのように表現する。こうした状況で期待されているのが農業のIT化だ。生産性向上、効率化、大規模化などを掲げ、海外ベンダーや大手ITベンダーのソリューションが話題に上ることが多い。だが、それに先んじて、農業者自らの手による現場発の農業ITが動き出している。
「リスク回避」。愛媛県松山市近郊で約3.5ヘクタールの柑橘農園を営む野本農園の野本敏武氏は、IT活用の目的をこう述べる(写真1)。
柑橘類は温度変化によって、品質が大きく左右される作物だという。「急激な温度上昇によって、皮が硬くなるなど品質が下がってしまう」(野本氏)。冬場の急激な気候変動により収穫時期を逸してしまうこともあるという。実際、愛媛県における気象による被害額は過去20年、年平均で13億円にも上る。
事前に気象の変動が分かれば、こうした被害を防げる――。そこに注目したのが「坂の上のクラウドコンソーシアム」だ(写真2)。同コンソーシアムは愛媛県労働経済部などの支援を受け、愛媛県の農業界、地元のIT企業、気象情報会社などがタッグを組む。
松山市に本社を置くIT企業のコンピュータシステムが統括代表、冒頭の野本農園が同コンソーシアムの農業界代表を務める。地元農家と地場のIT企業が予測農業に挑戦しているのだ。