電子カルテの導入によって、患者がより手軽で利便性の高い医療サービスを求める傾向が世界的に高まりつつある。同時に、患者をモニタリングする医療機器や、ウエアラブルセンサーなどの普及拡大が進んでおり、リアルタイムのデータを収集するニーズが高まっている。そんな状況下で、グローバル規模で“医療現場の分散化”が進んでいる。

 遠隔地への医療サービスの提供を可能にする新たな技術は「テレヘルス」と総称され、医療サービス提供のモデルに大きな変化をもたらしている。テレヘルスの中でも、医療現場で最も差し迫ったニーズがあるのは、消費者が「オンデマンド」で信頼できる医療従事者へのアクセスを可能にするテレメディシンである。

 テレメディシンの定義は用途、目的に応じて異なり、いまだ完全に定まっていない。ここでは、いつでもどこでも医療を受けることができ、医療サービスの提供手段を完全に分散化させ、医療従事者側における限界を取り払い、リソースとコストを最適化するという価値の提案を指すことにする。

 下記の図1は、テレメディシンが人の生涯を通じて、病院、在宅医療、プライマリケア、施設医療、リテールクリニック(簡易診療所)をはじめとした医療現場全体において、どのようなな価値を提供できるかを示している。将来、テレメディシンは、患者と医療従事者間の治療から予防までの広範囲において、大きな変化をもたらすだろう。

図1●テレメディシンを活用したコネクテッド型医療サービスのエコシステム
図1●テレメディシンを活用したコネクテッド型医療サービスのエコシステム
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 テレメディシンが現在世界的に進化を遂げている背景には、医療へのアクセスを改善する取り組みが進んでいることが挙げられる。自然災害の発生率が高い日本においては、これが特に重要な要素となっている。