人工知能(AI)に「感情」は宿るのか――鉄腕アトムからアニメ「イヴの時間」まで、あらゆるSF(サイエンスフィクション)で語られた問題に真っ向から挑んでいるのが、ソフトバンクグループでクラウドAIの開発を担うcocoro SBだ。

写真1●ソフトバンクロボティクスの「Pepper(ペッパー)」
写真1●ソフトバンクロボティクスの「Pepper(ペッパー)」
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 ソフトバンクロボティクスが開発するロボット「Pepper(ペッパー)」は、発話者の声や表情から喜怒哀楽の感情を読み取る感情認識機能を備えている(写真1)。さらに、2015年6月に一般販売したPepperは、Pepper自らが感情を持つという「感情生成エンジン」を備える。この感情生成エンジンを開発しているのがcocoro SBである。

 Pepperが備える感情生成エンジンとはどのようなものか、なぜ人工知能に感情が必要なのか、cocoro SB取締役の朝長康介氏と、同社の大浦清氏に聞いた(写真2)。

Pepperに、なぜ感情生成エンジンを組み込む必要があったのでしょうか。

写真2●cocoro SBの朝長康介取締役(右)と、同社の大浦清氏(左)。朝長氏は顔出しNGとのことでした
写真2●cocoro SBの朝長康介取締役(右)と、同社の大浦清氏(左)。朝長氏は顔出しNGとのことでした
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朝長氏 それを説明するには、Pepper開発の歴史、さらにはソフトバンクグループのAI研究の歴史からさかのぼる必要があります。

 ソフトバンクグループでは10年以上前から「技術戦略室 AIチーム」という組織があり、いわゆる人工知能の研究に取り組んでいました。1980年代の第五世代コンピュータプロジェクトでも使われた「Prolog」という人工知能向け言語を基盤にしたAI技術、具体的には自然言語処理やエキスパートシステム、ルールベースシステムの開発を進めていました。この成果を「コールセンターの人工知能化」などに応用していました。

 我々が最初にPepperプロジェクトと関わったのも、この自然言語処理の分野です。Pepperに自動会話システムを組み込むに当たっても、一部にPrologを使っています。