優れたIT人材を惹きつけるために、IT企業はどんなことに取り組んでいるのか。ECサイト開設・運営支援を手掛けるBASEの藤川真一取締役CTO(最高技術責任者)、ディー・エヌ・エー(DeNA)の木村秀夫システム本部執行役員本部長、求人情報サービスを運営するリブセンスの桂大介取締役に、ITエンジニア採用のトレンドを語ってもらった。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ


IT人材動向を語る藤川氏、木村氏、桂氏(左から)
IT人材動向を語る藤川氏、木村氏、桂氏(左から)
(写真提供:リブセンス)
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優れたIT人材の獲得競争が熱を帯びていますが、みなさんの企業の人材採用の状況を聞かせてください。

 企業の成長度合いに応じて、求める人材の要件が変わってきています。事業が小さいときは、こういうスキルの人が欲しいなどと、要件がピンポイントでした。企業規模が大きくなると要件が多岐にわたるようになり、この技術だけ、このサービスだけをやりたいと言われても希望に添えないことが多くなります。

 最近は技術レベルそのものを採用で最優先することは減ってきました。総合職も技術職も、採用基準はそれほど変わりません。むしろビジョンに共感できるかどうか、そこを重視しています。

木村 DeNAの場合、事業が幅広いので一人で全てをカバーするのは困難です。自動運転技術を使った「ロボットタクシー」からヘルスケア、野球と、何の会社であると一言で言えないコングロマリットになってきています。ロボットタクシーの人材と、女性向けキュレーションメディアの「メリー」で、同じ人材を採れるかというと、やはり難しい。ある程度、事業に特化した人を採らざるを得ない状況です。

 スマートフォン向けゲームで言えば、最近はネーティブアプリ型が主流になってきて、開発スタイルが据え置き型のコンシューマー機に近くなってきました。技術、マインドともに、ネーティブアプリの開発に合わせられる人を採るようになってきています。

BASEの藤川氏
BASEの藤川氏
(写真提供:リブセンス)
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藤川 BASEは他の2社に比べて規模が小さいこともあって、エンジニアから選ばれる立場だと思っています。ですから人材採用では、どうやって選んでもらうかを重視しています。

 そのためには、まず働くのが楽しそうと思ってもらうこと、そしてこれもみなさんと同じですが、ビジョンとか方向性が共感できる企業でないといけないと思っていますね。どんなにコードを書ける人でも、楽しいと思わなければ生産性は上がらないし、企業の方向性に共感できなければ手が動きません。

 楽しむとはどういうことかと言うと、入った人が、私たちの組織で柔軟に動けるか、成長可能性を見い出せるかどうか。単に技術レベルが高い低いではなく、エンジニア自身も事業も成長していると実感できることが欠かせないと思います。

こんな人材をぜひ採りたいという、人材像はありますか。

木村 技術にこだわりを持ちすぎる人は、その人の成長にとってマイナスです。ものすごいスペシャリストならともかく、技術はITエンジニアにとって武器だが道具にすぎない。それを柔軟に選べる、あるいは時代に合わせて変えられる人は、我々の文化に合うし、活躍できるイメージがあります。