デジタルガレージ主催の「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2015 TOKYO」が、2015年7月6~7日に開催された。初日のテーマは、「デジタル通貨の未来」。世界中から識者が集まり、ビットコインをはじめとしたデジタル通貨や基盤技術の最新トレンド、規制の動向などを語った。本レポートでは、全3回でその模様を報告する。

写真1●デジタルガレージ取締役 共同創業者でMITメディアラボ所長の伊藤穣一氏
写真1●デジタルガレージ取締役 共同創業者でMITメディアラボ所長の伊藤穣一氏
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 「これは、今までにはなかった種類の『危機』だ――」。

 デジタルガレージ取締役 共同創業者でMITメディアラボ所長の伊藤穣一氏は、「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2015 TOKYO」の講演で、ビットコイン関連のスタートアップ企業に大量の資金が投じられている様をこう評した(写真1)。

 インターネット黎明期をよく知る伊藤氏は、暗号通貨やその基盤であるブロックチェーン技術の現状について、インターネット黎明期とよく似ている一方、大きく異なる点があると指摘する。それは、インターネットと比較して成長が速すぎることだ。以下、伊藤氏の発言を要約して紹介しよう。

 インターネットの黎明期には、10年ほどをかけて米ネットスケープコミュニケーションズや米イーベイといった企業に資金が投じられた。ビットコインの場合、黎明期の段階でスタートアップ企業に大量の資金が流れ、その時間が大幅に短縮している。

 比較的成長が緩やかだったインターネット初期には、中立な立場の標準化団体や技術者が多く参加し、インターネットの壊れた部分を直していった。こうしてできた堅牢なインフラの上に、様々なビジネスが作られた。

 これに対してビットコインは、ビジネスが大きく先行する一方、インフラは安定しているのか、どうガバナンス(統制)するのかといった、難しい問題が残されたままになっている。

 この結果、ビットコインの成功が儲けに直結する技術者が多くなる一方で、インターネット黎明期には豊富にいた「中立な立場の技術者」が不足している。

 そこで伊藤氏は、暗号通貨やブロックチェーン技術の研究組織「Digital Currency Initiative(デジタル通貨イニシアティブ)」を2015年4月に設立した。