事業をグローバルに広げ、新規事業を生み出すエンジン。リクルートホールディングスは、2015年4月に開設した人工知能研究所をこう位置づける。リクルートはどのような人工知能(AI)人材を求め、どのように生かすのか。研究所を率いる石山洸氏(写真)に聞いた(聞き手=浅川 直輝)。

Recruit Institute of Technologyを「人工知能研究所」として再編した目的を教えて下さい。リクルートは元々、機械学習や自然言語解析など広義のAI(Artificial Intelligence)に積極的に取り組んでいたと思いますが。

写真●リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology Head of Instituteの石山洸氏
写真●リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology Head of Instituteの石山洸氏
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 確かに、リクルートでは10年以上前から、広義のAIを事業に役立てています。「ビッグデータ部」「メディアテクノロジーラボ」などの組織に、AIに詳しいデータサイエンティストが数多く集まっています。

 今回、人工知能研究所を設立するに当たり、二つのポイントを重視しました。

 一つはグローバル。リクルートの事業をグローバルに拡大していくのに合わせて、AIの研究も世界トップの水準に高めたかった。

 もう一つは、新規ビジネスの創出です。これまでのリクルートは、AIを「既存事業の効率化」のために導入していました。今後は、AIで新規ビジネスを作るか、あるいは従来のモデルを破壊する破壊的モデルを作りたい。

 研究所といっても、何かハコモノを作るわけではありません。ビジネスの現場と一体化させ、具体的なリターンを求めます。まだ公開できませんが、具体的なサービスにつながる三つのプロジェクトが走っています。オープンイノベーションの手法を取り入れ、アドバイザーや国内外のスタートアップ企業と協業します。

 さらに優秀なAI人材を獲得するため、ほぼ毎日、採用の面談を行っています。研究所を設立した2015年4月からの2カ月で100人以上と面接し、2人を採用しました。

コーディング力がなければ採用しない

狭き門ですね。どのような人材を求めていますか。

 国内・海外、新卒・中途と問わず、「グローバル×新規」に挑戦する人材を求めています。

 採用基準は高めです。まずTOEICで言えば少なくとも850点、できれば900点以上を求めます。

 我々は今、研究所のアドバイザーを務める米国の著名な研究者3人と、研究開発の戦略についてSkypeで日々ミーティングしています。このため、語学上のハードルがない方に来てほしい。

 業績面では、機械学習などAIの領域でPh.D(博士号)を取得済みか、論文執筆数やAIのコンペなどで博士と同等の成果を挙げていることが条件です。

 スキルで求めるのは、コードが書けること。リアルなプロダクトを開発できるくらいのコーディング力を要求しています。「論文は書けるし、R(統計解析ソフト)も使えるが、C++やPythonを使ってフルスクラッチでアルゴリズムを実装したことがない」という方は遠慮いただいています。

 このほか、「企業でビッグデータを取り扱った経験があるか」も問います。最近ではインターンシップなどもあり、学生でも実データ分析の経験を積めますから。結構あるのが「機械学習は得意だけど、Hadoopを使ったことない」ようなパターンで、せめて一通りは触れた経験が欲しいところです。