機械学習や自然言語処理といった人工知能(AI:Artificial Intelligence)の領域で、優秀な人材の奪い合いが世界各地で起きている。ITpro連載「脳に挑む人工知能」第8回以降は、日本、米国を中心としたAI人材獲得の現場をレポートする。

TOEIC 900点、博士号、実装力

 東京・千代田区にあるリクルートホールディングスのオフィス。同社が2015年4月に開設した人工知能研究所(Recruit Institute of Technology)を統括する石山洸氏は、毎日のように採用面接を繰り返していた。

 その目的について、石山氏は「リクルートが人工知能で世界トップになるため、トップ級の研究者にジョインしてもらうこと」と語る(写真1)。

写真1●リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology Head of Instituteの石山洸氏
写真1●リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology Head of Instituteの石山洸氏
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 採用の条件は厳しい。TOEIC 900点以上の英語力と、機械学習に関する博士号相当の研究実績、そして人工知能を具体的なサービスに結びつけるソフトウエア実装力を求める。「いくら研究業績が優れていても、C++やPythonを使えず、Hadoopに触れたことがない研究者は採用しない」(石山氏)。

 リクルートホールディングスは、人材ビジネスや販促ビジネスといった得意分野に人工知能の技術を適用し、新規のサービスを立ち上げる考え。石山氏は「既に研究所では、3本の開発プロジェクトが実際に走っている」と説明する。

 優秀なAI人材を惹きつけるため、同研究所はアドバイザーとして米国の人工知能の著名な起業家、研究者を迎えた(ITpro関連記事:リクルートがAI研究所を開設、米研究者3人をアドバイザーに)。採用基準にTOEIC 900点以上としているのは、アドバイザーと円滑に議論できるだけの英語力を求めているからだ。

 石山氏は既に100人以上と面談し、うち2人を採用した。今後も採用面接を続ける考えだ(同氏のインタビューを2015年6月24日に掲載予定)。

膨大なデータに惹かれた

 ところ変わって、米国のペンシルベニア州ピッツバーグ。カーネギーメロン大学の近郊にオフィスを構えるスタートアップ企業に、自然言語処理を専門とする2人の日本人エンジニアが入社した。