もし誰かが「私はブラックベリーが好きだ」といったとき、それは果物のことだろうか、それともデバイスのことだろうか?(米フェイスブックのブログポストより

 会話やテキストに込められた意味を、どうやってコンピュータに理解させるか。米フェイスブックが2016年6月2日に発表したテキスト理解エンジン「DeepText」は、こうした問題を、伝統的な自然言語処理テクニックより効率的に解けると、同社は主張する。

 DeepTextは、ディープラーニング(深層学習:多層ニューラルネットワークによる機械学習)を使う事で、言語特有の文法知識を利用することなく、コンピュータが自ら言語の構造や、単語の意味を学習できる。

 現在は20カ言語以上に対応し、1秒あたり数千件の投稿の文章を「人間に近い精度(near-human accuracy)」で理解するという。自然文を理解するチャットボットの基礎技術といえる。

 実際にフェイスブックは、メッセンジャーアプリ「Messenger」でDeepTextの適用を始めているという。例えば「タクシーに載りたい」と書き込むと、その下にタクシーを呼び出せるツールを表示する。一方で「私は今タクシーから降りた」という書き込みには反応しない。

(出所:米フェイスブックのブログポスト)
(出所:米フェイスブックのブログポスト)
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 物品の売買にも使える。例えばMessenger上で「私の古いバイクを200ドルで売りたいんだけど、誰か興味ない?」という書き込みがあったとする。DeepTextは「物品の売買に関する書き込みだ」と理解し、「売るもの:古いバイク」「価格:200ドル」といった情報を抽出する。コンピュータがここまで理解できれば、書き込み主に対し、中古販売を支援する適切なツールを勧められる。

 物体認識や音声認識で威力を発揮したディープラーニングを、コトバの理解に応用する取り組みはこれまでもあった([脳に挑む人工知能6]グーグルのAIにみる、コトバと視覚の接点とは)。チャットボットへの注目度の高まりにあわせ、研究開発が加速している。その台風の眼はフェイスブックだ。

 「脳に挑む人工知能」第23回は、ディープラーニングを使ったテキスト理解について、DeepTextに至るまでの発展を振り返りながら、そのインパクトを考察する。