マイクロソフトは、2017年4月11日から配布中の「Windows 10 Creators Update」(開発コード名はRed Stone 2、以下RS2)の次のアップデートとなる「Windows 10 Fall Creators Update」を2017年後半に出荷する予定だ。

 米マイクロソフトはその詳細を5月に米国で開催した「Build 2017」で発表したが、既にRS2の完成後に、開発者・評価者向けに開発途上版をいち早く提供する「Windows Insider Program」ではRS3のプレビュー版の配布が始まっている。本記事では、Insider ProgramやBuild 2017での情報を基にWindows 10 Fall Creators Updateの概要を解説する。

Fall Creators Updateは積み残し解消と次の地ならし

 Windows 10 Fall Creators Updateは、Windows自体のアップデートや機能追加ではあるが、RS2までに掲げた目標に対する「積み残し」解消と「次世代アプリプラットフォーム」に向けた準備をする役目もある。

 Windows自体のアップデートでは、「Windows Timeline」やユーザーの利用するAndroid、iOSスマートフォン、PC間で作業や処理を引き継げる「Pick Up Where You Left Off」機能やクリップボードを共有する「Cloud-powered Clipboard」機能、OneDrive上の全てのファイルが見え、必要なものをその場でダウンロードできる「OneDrive Files On-Demand」などがある。

 「積み残し」とは、例えば一度はマイクロソフトがRS2の機能として紹介しながら、搭載しなかった「Windows My People」の追加や、CPU内蔵グラフィックスで複合現実(Mixed Reality:MR)を可能にすることなどだ。

 また、米インテル製CPUが実装している省電力機能「Speed Shift」に対応した「Power Throttling」もWindows 10 Fall Creators Updateで実装される予定だ。RS2までは実験的な実装で最終版には含まれなかった。これにより負荷状態に応じてCPUの動作速度を制御し、より高い電力効率を実現できるようにする。

 Windows 10 Fall Creators Updateでは、ペンによるナビゲーションも強化される。RS2まで、ペンはポインティングデバイスではあるが、Windowsの操作用としては機能が限定されていた。例えば、ドラッグは必ず範囲指定と解釈されていた。

 これに対してタッチの場合は、選択できるオブジェクトが無いところでドラッグすると、ページのスクロールと解釈されるなど、Windowsの操作ができる。Fall Creators Updateでは、例えばWebブラウザー内のWebページの何も無いところでドラッグすると、選択ではなくページのスクロールをする。

 「次世代アプリプラットフォーム」への準備とは、具体的には、後述するFluent Designの導入やクラウド側のユーザー情報から関係性などを推論できるMicrosoft Graphを使うアプリを開発しやすくすることなどだ。また、UWP(Universal Windows Platform)アプリをAndroidやiOS用に移植しやすくするための「.NET Standard」や「XAML Standard」に対応する。その他、SDKや開発ツールなども拡充させる。

Fluent Designは、奥行きを使った表現などを持つ新しいGUIスタイルだ
Fluent Designは、奥行きを使った表現などを持つ新しいGUIスタイルだ
(出所:Build 2017基調講演ビデオ)
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XAML Standardを使うことで、Windows 10のPC版やスマートフォン版だけでなく、Android、iOSでも同一のユーザーインターフェースを提供できるようになる
XAML Standardを使うことで、Windows 10のPC版やスマートフォン版だけでなく、Android、iOSでも同一のユーザーインターフェースを提供できるようになる
(出所:米マイクロソフト)
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