東南アジアでは昔からバイクタクシーがよく利用されてきたが、スマホで簡単に呼べる新しいタイプのバイクタクシーが急成長している。Uberのバイク版といった位置付けのサービスだ。こうした動きは、製造業のビジネスモデルを変えつつあり、大手バイクメーカーのホンダも注目している。
東南アジアの大都市はいつも大渋滞だ。そのため昔からバイクをタクシーとして利用する「バイクタクシー」は一般的で、現在でも数多く存在している。インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムでは路上で客を待ち、値段交渉をして、客をバイクの後ろに乗せて目的地に運ぶ。副業でバイクタクシーをやっている人も多い。
バイクタクシーは現地人にとっては重要な足であり、日常に根付いた移動手段だ。特に電車がほとんど整備されていないインドネシアの首都ジャカルタの交通渋滞は凄い。道路は通勤時だけでなく常に渋滞している。一方通行の道路も多く、事故などで封鎖されていることもあり、さらに渋滞を加速させている。こうした渋滞で車なら何時間もかかるような道でも、バイクなら早く到着できる。
ジャカルタでは、昔からOjek(オジェック)と呼ばれるバイクタクシーが一般的だ。現在でも「Ojek乗り場」のような「バイクの溜まり場」が道路沿いにあり、利用者はそこでバイクタクシーの運転手に行き先を告げて乗る。
スマホで呼べるバイクタクシーが急成長
この1年くらいでインドネシアのバイクタクシー事情が大きく変わった。町中に緑色のジャンパーとヘルメットを着用した「GO-JEK(ゴジェク)」社と「Grab(グラブ)」社のバイクがやたらと目立つようになった。インドネシアでは、ほぼGO-JEKとGrabの2強状態になった。
GO-JEKは現地企業だが、Grabはインドネシアだけでなく東南アジア諸国でも事業展開しており、2014年12月にはソフトバンクも出資している。ソフトバンクにとって東南アジアでは最大の出資先であり、2016年10月にはソフトバンクの投資部門出身のミン・マー氏が社長に就任している。2016年12月には、同社とホンダがバイクシェアリングで協業すると発表した。
GO-JEKとGrabは配車アプリUberのバイク版のようなもので、スマホで誰もが気軽に呼べるバイクタクシーだ。現在ではタクシーは流しをつかまえたり電話で予約をしたりするよりもスマホのアプリで呼ぶほうが簡単で、決済もスムーズにできるのだ。
利用者は今までのようにバイクタクシー乗り場に行って交渉する必要はない。スマホのアプリで、近くにいるバイクタクシーを見つけて、必要なところまで来てもらい、目的地まで乗せてもらう。両社とも料金が明瞭で、アプリで支払いもできる。