最近は、AI(人工知能)が様々な分野で注目を浴びている。そのAIを支える技術の一つが「ディープラーニング(深層学習)」だ。ディープラーニングでは、大量のデータをコンピュータに読み込ませて、そのデータの特徴を「学習」させる。その「学習」では膨大な演算が必要になる。
米エヌビディアは、ディープラーニングに注力する企業の一つだ。同社が手掛けるGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)が備える多数の演算器がディープラーニングに向くとして、自社のGPUチップ/ボードを利用する様々なソリューションを提供している。
エヌビディアは2016年4月4日~7日までシリコンバレーで「GPU Technology Conference」を開催。ディープラーニング関連の多数の発表を行った。AI時代のキープレーヤーの1社であるエヌビディアの戦略を、そのイベントから読み解く。
ディープラーニングは既にプラットフォーム化
GTCの初日基調講演には、エヌビディアCEO(最高経営責任者)で創業者のジェンセン・ファン氏が登場した。講演のタイトルは「A New Computing Model」。これは、ディープラーニングに代表されるAI技術が、既に計算モデル(Computing Model)として確立し、様々な応用が始まっていることを訴えるもの。グラフィックス関連などエヌビディアのほかの市場に対する製品発表などを含んでいたが、GPUによるAI技術の進展が語られた。
既に1カ月前のイベントなのでここでは詳細は記さないが、主旨は以下の通りだ。ディープラーニングは既に実用段階に入っていて、今や様々な処理を高度化、高速化するための計算モデルの一つになった。多くのインターネット関連企業などがこれを採用し、自社サービスに取り込むだけでなく、プラットフォームとしての提供が開始されるまでになった(写真1)。さらにディープラーニング分野での起業が増え、世界的な大企業もディープラーニング関連技術を利用しつつある。これらがタイトルに関連したメッセージだった。
具体的な製品として同社が発表した中でディープラーニングに大きく寄与するのが「Tesla P100」(写真2)と、これを応用したサーバーマシン「DGX-1」(写真3)だ。
Tesla P100は、同社の「Pascalアーキテクチャー」を採用するGPUデバイスだ。エヌビディアの「Tesla」は汎用演算向けのブランド名。主にゲーム用であるグラフィックス用の「GeForce」シリーズと同じアーキテクチャーを採用しながらも、演算ユニットなどの構成を変えている。ちなみにエヌビディアのGPUのアーキテクチャーにはここのところ著名な科学者の名前が付けられている。これまではFermi(フェルミ)、Kepler(ケプラー)ときて直近がMaxwell(マクスウェル)だった。
DGX-1は、Tesla P100デバイスを8個と、米インテルのサーバー向けプロセッサ、Xeon(DGX-1が搭載しているのはXeon E5-2698 v4、2.2GHz、20コア)を2個搭載したディープラーニング専用マシンだ。エヌビディアは、このDGX-1を「世界初のディープラーニングスーパーコンピュータ」と呼ぶ。Xeon E5-2697 v3プロセッサとTesla P100のディープラーニングの学習時間を比較して、250ノードのサーバーがこの箱に入っていると主張する。