富士通は2017年1月18日、香港の金鐘で「富士通アジアカンファレンス2017香港」を開催した。「Human Centric Innovation-Driving Digital Transformation」という共通テーマに基づいてアジア各都市に展開しているカンファレンスで、香港での新旧の大規模プロジェクトからゲストスピーカーを招き、デジタル革新の動向や事例についての情報を共有した。

 まずオープニングスピーチに、富士通の執行役員Asiaリージョン長の広瀬敏男氏が登壇した(写真1)。広瀬氏は、自然災害から大気汚染、人件費の高騰まで、アジアが直面するさまざまな問題の解決の鍵は、最新テクノロジーにあることを強調。「アジアと香港のさらなる成長と発展のために、今後も手を取り合っていきたい」と語った。

写真1●富士通の高重吉邦マーケティング戦略室長
写真1●富士通の高重吉邦マーケティング戦略室長

 続いて、富士通香港の旭久樹社長が挨拶に立った(写真2)。旭社長は、富士通が香港のITサービスプロバイダートップ5に選出されたことを披露。香港では既に、大手コーヒーショップ、銀行、航空会社など多岐にわたる企業とデジタル革新を実現していると話した。加えて、「デジタル革新により、顧客経験の向上からITコストの低減、生産性の向上などを達成していこう」とし、この後続くスピーチの流れを紹介した。

写真2●富士通香港の旭久樹社長
写真2●富士通香港の旭久樹社長

デジタルの大波を乗りこなす革新=ヒューマンセントリック

 基調講演は2本立てで、最初に香港の「サイエンスパーク」ことHong Kong Science and Technology Parkのアルバート・ウォンCEOが登壇した(写真3)。講演タイトルは「スマートシティの今日と明日」。ウォン氏は、香港にスマートシティが求められる背景として、交通網の混雑、大気汚染、医療機関の過剰な待ち時間などの課題を挙げた。2002年にオープンしたサイエンスパークには、634社のテクノロジー企業が入居している。香港では、もう一つ、サイエンスパークの4倍の面積を誇る新パークを中国本土との国境付近に設立する計画。ウォン氏は、これらのサイエンスパークを、香港のスマートシティ化とデジタル革新の牽引役に位置づける。

写真3●Hong Kong Science and Technology Parkのアルバート・ウォンCEO
写真3●Hong Kong Science and Technology Parkのアルバート・ウォンCEO

 ウォン氏は、ビッグデータの蓄積とその分析によって、環境、交通、医療、財政、サプライチェーンなど、住民の生活全般の質を高められるとともに、企業にとってのビジネスチャンスが拡大することを強調。その礎となるビックデータの分析のために、サイエンスパークに「データスタジオ」を設置予定だという。このデータスタジオでは、香港の政府団体、公共セクター、企業はもちろん、世界中からのデータセット提供を促し、それを活用したアプリ開発を促す。将来的には、この「データエコシステム」を世界中に広げ、「バーチャルサイエンスパーク」を実現したいと話した。

 基調講演の2人めは、富士通の高重吉邦マーケティング戦略室長(写真4)。高重氏は、デジタル革新の趨勢を「デジタルの波」として説明し、インターネット、モバイルインターネットに続き、IoT(Internet of Things)、さらにAI(人工知能)とロボティクスといった技術の普及が、社会を激変させる大波になっていく、と話した。

写真4●富士通の高重吉邦マーケティング戦略室長
写真4●富士通の高重吉邦マーケティング戦略室長

 デジタル革新がもたらす成果として、高重氏は、ファッション分野や医療機器分野の企業におけるビジネスモデルの変化事例を紹介。クルマや歩行者の位置と動きを把握するモビリティプラットフォーム「SPATIOWL」も紹介した。

 高重氏はさらに、革新の軸足は人間にあり、生活の向上や創造的な作業の重視、心地よい顧客体験や、迅速な意思決定など、人々を力づける「ヒューマン・エンパワーメント」がイノベーションを生み出すための重要な要素であると力説。富士通が、80年を超える経験を基盤に、年間20億米ドルの研究開発費を費やして未来に向けて常に前進していることを説明し、来場する香港の顧客やビジネスパートナーと富士通の協力を呼びかけた。