富士通は2017年1月11日、インドネシア・ジャカルタで「富士通アジアカンファレンス2017ジャカルタ」を開催した。「ヒューマンセントリックイノベーション〜デジタル革新の推進(Human Centric Innovation - Driving Digital Transformation)」をテーマとするカンファレンスツアーの一つで、インドネシアのビジネスパーソンなど約250人が参加し、講演に聞き入った。

 まず最初に、富士通の執行役員アジアリージョン長である広瀬敏男氏が挨拶し、「富士通のアジアでのミッションは、ICTソリューションを通じて、ビジネスや社会の課題を解決することだ」と述べた(写真1)。アジア地域は世界経済を考えるうえで重要なポジションにあるものの、一方では人口増加に伴う食糧不足、企業のグローバル市場での競争力不足といった課題を抱えている。広瀬氏は中国やシンガポールでのデジタル革新の事例を挙げ、「インドネシアでも、より良い未来のためにICTの力を提供していきたい」と語った。

写真1●富士通の執行役員アジアリージョン長である広瀬敏男氏
写真1●富士通の執行役員アジアリージョン長である広瀬敏男氏

 続いて、富士通インドネシアのカントリープレジデント、アフマッド・スヌアジ・ソフワン氏が富士通のインドネシアでの取り組みを紹介した。1995年の設立から約20年、今ではインドネシアにおける顧客は、製造、金融、情報通信、政府機関など、幅広い分野に及び、500社・団体を超えるという。ソフワン氏は、インドネシアでのデジタル革新を推進すべく、より効率的に業務を遂行できるようにするシステムの導入を支援していくと、意気込みを語った。

インドネシア版のアリババ登場に期待

 挨拶に続くゲスト・スピーチには、インドネシア情報科学通信省情報科学応用局長のスムエル・アブリジャニ・パンゲラパン氏が登壇(写真2)。「情報通信技術とインドネシアのデジタル経済」と題し、インドネシアでのインターネット利用の現状と予測、政府の取り組みについて解説した。

写真2●インドネシア情報科学通信省情報科学応用局長のスムエル・アブリジャニ・パンゲラパン氏
写真2●インドネシア情報科学通信省情報科学応用局長のスムエル・アブリジャニ・パンゲラパン氏

 インドネシアでの2016年のインターネット利用者は全人口の51.8%に当たる約1億3200万人で、6年前に比べると3倍に伸びている。利用目的として顕著なのが「オンラインでのモノやサービスの購入」。スムエル氏は「人々は、インターネットとはモノやサービスを売買する場であると認識しており、これは非常に大きなビジネス・チャンスである」と指摘した。

 インドネシア政府も電子商取引拡充に力を入れており、「5年以内にインドネシアでの電子商取引を東南アジア最大にする」ことを目標に掲げ、ロードマップ策定を進めている。特に注視しているのが中小企業による利活用の促進。スムエル氏は、「全国で約5600万社に上る中小企業のICT活用を促せば、インドネシアでも『アリババ』のような企業が生まれるかもしれない」と話した。

 電子商取引におけるICT人材育成や税務といった課題の中で、スムエル氏はサイバー・セキュリティの確保を最重要ポイントとして挙げる。これに対して政府は認可制度や電子署名などに関する法整備を進めているとし、「法律の規定により、インドネシアでインターネット・ビジネスを行うなら、データセンターはインドネシア国内になければならない」として注意を促した。

 インドネシアではほかにも、2020年までにインドネシア全国87県をブロードバンドでつなぐ「パラパ・リング」構想、「.id」ドメインを無料で付与して「.id」ドメインを増殖させる「100万ドメイン計画」も進行中。スムエル氏は「インターネットはサービスの概念を変えた。以前は消費者が店を訪れてモノやサービスを購入していたが、今はベクトルが逆。モノやサービスの提供者が(インターネットを通じて)消費者の家まで訪れている。政府も同じだ。これまでは市民がサービスを受けに役所へやって来たが、これからは政府が市民の所まで行ってサービスを提供する」と電子政府の構想を語った。