2017年1月18日に開催されたオープンイノベーション分野の専門イベント「Draper Nexus B2B Summit in Tokyo 2017」(以下、B2B Summit2017)では、オープンイノベーションに積極的な国内大手4社が登壇した。登壇者の顔ぶれは、製造、金融、IT、不動産とさまざま。多くの業種でオープンイノベーションが進展しつつあることが浮き彫りになった。

写真1●国内大手企業によるオープンイノベーションのセッション
写真1●国内大手企業によるオープンイノベーションのセッション
撮影:寺尾 豊
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 小松製作所(コマツ)CTO(最高技術責任者)の高村藤寿氏は、同社のイノベーション戦略における3つのフェーズを紹介した。具体的には、強力なハードウエアを開発する第1フェーズ、そのハードウエアを顧客に最大限使ってもらうためのサービスを組み合わせた第2フェーズ、そして、顧客の現場全体を見える化して総合的な付加価値を提供するフェーズ3である。

 同社のオープンイノベーションのきっかけは、鉱山における無人ダンプトラックだったという。「土を運ぶ」というKPI(重要業績評価指標)を追求した結果として、米国の大学からスピンオフしたベンチャー企業の周辺技術を取り入れるなどして、単にトラックを売るだけでなく運行システム全体を請け負うことになった事例を紹介した。

 同社は、この事例で培ったオープンイノベーション体験を一般土木にも広げる「スマートコンストラクション」を推進している。さらに、建設技術者がこれから大量に不足するなど業界全体の課題に眼を向け、その解決策を探っているとした。

 そんなコマツだが、意外にもCTO職を設けたのは3年前のこと。それまでは各事業を推進する現場の技術開発責任者だけだったが、世の中の動向を見据え、なおかつ外部との連携を推進するCTOを新たに設けたのだという。同社のCTO室は専任者と兼任者で構成され、社内のネットワーク化を図っているのも特徴である。

 みずほフィナンシャルグループ執行役常務グローバルプロダクツユニット長兼インキュベーションPT担当役員の山田大介氏の話題の中心はFinTech。同氏は「FinTechは産業革命である」として、脅威ではなく、利用するもの、共に歩むものとして捉えているという。

 FinTechの適用領域としては、固定費を下げる分野に期待しているとした。技術としてはブロックチェーンとAIに注目。現在、人海戦術的でこなしている業務に適用できる可能性を示した。このような業務については、必ずしも企業間の競争力につながる部分ではなく、他行とも連携して導入する考えもあるという。

 スタートアップ企業との連携活動については、みずほグループが推進する「M’s Salon」を紹介した。これは、スタートアップ企業の成長を促すための会員制サービス。オープンイノベーションに積極的に取り組んでいる大企業が「サポートカンパニー」として、スタートアップ企業を多面的に支援する。