いつもの道を歩いていると、スマートフォンから耳慣れた通知音が聞こえてきた。画面を見ると、通りすがりの自動販売機から飛んできたキャンペーンのお知らせだった──。

写真1●コカコーラが実証実験している新型の自動販売機
写真1●コカコーラが実証実験している新型の自動販売機
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 日本コカ・コーラは2014年6月から7月中旬まで、このような通知が可能な新型の自販機(写真1)の実証実験を東京・原宿の一部地区で実施した。スマホが受信したのは、Bluetooth通信を使って自販機が周囲に発信し続けているメッセージ。米アップルが開発、規格化したiBeacon方式の送信機を内蔵している。スマホのユーザーが受信した通知を開封すると、対応するアプリケーションが自動的に起動して電子クーポンを取得したりキャンペーンに応募したりできる。実験段階でのiBeacon搭載自販機の設置台数は約30台で、電子雑誌アプリ「R25」の協力を得て、近くのレストランと連携したキャンペーンを告知した。

 日本コカ・コーラは今回の実験検証を踏まえて本格的な事業化に乗り出す考えだ。2015年中に自社ブランドのアプリを新たに開発したうえで、電子マネーなどのキャッシュレス決済に対応した自販機を中心に設置台数を段階的に増やしていく。キャッシュレス決済対応の自販機なら「飲料15本の購入ごとに、もれなく1本を無料提供します」といった継続的な特典も提供できるため、顧客のロイヤルティー向上につなげられる。

 自販機へのiBeacon機能の搭載と、それに対応したスマホアプリの提供は、日本コカ・コーラの自販機ビジネスを大きく変える可能性があるという。自販機はiBeaconと対応することで設置した位置情報とひも付けができる。キャンペーンへの参加をスマホ用アプリで管理することで、消費者がどこで自販機を利用し、何を購入したかを把握できるようになる。

 同社においては、国内で設置台数98万台という国内随一の自販機のネットワークを生かし、これまで顔が見えていなかった消費者とより緊密な「つながり」を持てるようになるわけだ。事業に携わるIMC iマーケティングの豊浦洋祐統括部長は「自販機を利用する膨大な消費者と直にコミュニケーションが取れるようになり、巨大なCRMを構築できる」と意気込む。