「すごい」「そんなことまでできるの」。驚きの声があちこちから出る。

 ここは作業用品販売チェーン最大手のワークマン東京本社。2014年2月から、店舗の経営指導を担当するスーパーバイザー70人が、エクセルの使い方を学ぶ研修を始めた。

 午前9時から午後5時まで1日みっちり学ぶ。講師を務めるのは、9人のスーパーバイザーから成る「分析チーム」のメンバーだ。仕事で使うデータや書類に則して、覚えておくと便利なエクセルの使い方を簡単なマニュアルにまとめ、実際に手を動かしながら操作方法を教える。

 同社は2014年内に、フランチャイズを中心とした全国約730店舗に販売情報管理システムを導入する計画だ。ITシステムの強化と並ぶ販売強化策は、データ分析スキルをスーパーバイザーに習得させること。店舗指導に必要となる様々なデータを自由自在に分析できるようにし、適切な店舗指導ができるスーパーバイザー育成策の一環として進めているのが、この集合研修だ。

ワークマンは店舗指導のスーパーバイザー向けにエクセル研修を開催
ワークマンは店舗指導のスーパーバイザー向けにエクセル研修を開催
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 エクセルの基礎講座はその“前振り”という位置づけ。ところが実際にやってみると、「基本的な使い方を知らない社員も多かった」と分析チームのリーダーを務める長谷川誠マネジャーは話す。

 スーパーバイザーはノートパソコンを持ち歩き、エクセルも普段から使っている。一通り使いこなしているように見えるが、実際には手作業で計算式を入力したり、グラフ作りを何度もやり直したりと、効率の悪い使い方をしているケースもある。

「ムダな使い方」が明らかに

 同社にはこれまでエクセルの研修が無く、各社員は独学で習得していた。「社員によるスキルのばらつきが大きかったが、外からは見えにくい。集合研修で初めて明らかになった」と長谷川マネジャー。

 実は講師役を務めた分析チームのメンバーも、研修に備えて書籍やネットでエクセルの使い方を学び直したところ、条件付き書式や関数など、それまで使っていなかったが仕事に役立つ機能がたくさんあることに驚いたという。研修中は分析チームのメンバーが各テーブルを回って、操作に戸惑う社員を手助けした。また同じテーブルのメンバー同士で教え合う光景も見られた。

 研修の後半では、スーパーバイザーがABC分析図やZチャートなどをエクセルで作成する演習も実施。自分の手を動かして、分析のロジックを改めて確認した。最終セッションでは、各スーパーバイザーの担当店舗の実データを使って、推奨商品や仕入れ数を算出する演習までこなした。2014年5月にはより実践的な分析研修を行う予定だ。