「ビッグデータの活用事例や分析ツールに関する情報収集はしやすくなっているが、それだけでは足りない。やはり統計学の基礎知識がないと、実務でデータ分析をしたり、最適な分析ツールの選定をしたりすることは難しい」。三井物産の水澤智直IT推進部グローバルユーザサポート室マネージャーはこう話す。
そこで三井物産は、統計学を学べる“少数制集団指導の統計学習塾”を社内で開講した。社内システム部門であるIT推進部と、次世代ビジネスを考案する情報戦略部門の担当者約10人を集め、「初級統計学」と呼ぶ社内研修を実施しているのだ。
データ分析スキルは今や、マーケティング部門に限らず様々な部門で必要とされている。IT推進部は、システム運用・保守などに関連するデータを分析し、現状よりも効率的にシステムの性能や機能の改善を図る考えだ。
研修の講師を務めるのは、外部のプロ。社会人向けの数学教育サービスを手掛けるすうがくぶんか(東京・杉並)の瀬下大輔代表取締役だ。
三井物産の担当者は、2013年11月から毎週1回のペースで、午前11時からの2時間、仕事に使える統計学を学ぶ。研修の回数は全部で12回。内容は三井物産の要望に応じて“カスタムメイド”されている。
2014年2月、東京・大手町にある三井物産本社のセミナー室では、10回めとなる研修が開かれていた。前回の宿題だった「ことわざへの共感アンケートの因子分析」に関する解説から講義は始まった。
この研修の特徴は、実践演習型。手を動かしながら学べる。ノートパソコンを持参し、サンプルデータを使って、データを統計解析するためのプログラミング言語「R言語」でデータ分析を試みる。既に9回の研修を終えて、R言語の基本的なスキルも習得済みだ。
「座学形式で受け身で講義を聞いているだけでは、分かったつもりでいても、実践できないことも少なくない。毎回、先生に宿題を出してもらって、予習と復習で、スキルが定着するようにしている」(水澤マネージャー)。まさに、受験対策の学習塾のようだ。
受講者の満足度も高い。「プロジェクトでアンケートやデータ分析をすることはよくあったが、単純に平均値を出すぐらいしかやっていなかった。今では、標準偏差や分布をイメージしながら、データ分析できるようになり、自信がついた」。受講者の1人である友金壮一郎IT推進部技術統括室マネージャーはこう話す。