本特集では、国内ICT市場にいまどのような変化が生じているかを定量・定性の両面から解説している。前々回(規模は横ばい、「第3のプラットフォーム」への主役交代が進む)は国内ICT市場全体の動向を、前回(最新ICTに乗り遅れるな! 国内製造・流通に不可欠な抜本的改革)は製造・流通業が今後取り組むべき課題を紹介した。

 今回は、金融機関の動向を取り上げる。本特集で触れてきた第3のプラットフォームを中心としたICTソリューションの活用状況に加えて、今後の金融機関で大きな課題となる地域振興に求められるICT活用策について見ていきたい。

新たな事業戦略の策定を迫られる金融機関

 金融機関が業務やサービスを提供するうえで、ICTの利活用が欠かせないのは言うまでもない。他の産業分野と比較しても、金融機関におけるICTの役割は重要である。勘定系システムなどは主要な社会インフラの一部として位置づけられており、障害が生じると利用する企業や個人に対して甚大な影響を及ぼす。

 このため、多くの金融機関ではシステムの安定稼働を最優先事項としており、クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術から成る第3のプラットフォームの活用に対し、金融機関の多くは消極的な姿勢を採っていた。

 だがその一方で、従来の金融機関のビジネスモデルでは収益拡大が困難になりつつある。経済成長の鈍化や少子高齢化などが要因として挙げられる。

 そこで現在では、新たな事業戦略の策定を迫られ、ICTを活用した金融サービスの提供や業務革新に乗り出す金融機関が増えつつある。特に増加しているのが、クラウドやモビリティを中心とする第3のプラットフォームを活用した取り組みである。