「社会インフラの脆弱さや人材の不足を考慮して、クラウド環境を選択した」――。大和総研の伊藤慶昭クラウドサービス部長は、このように語る。同社は2014年5月29日、ミャンマー中央銀行の基幹系システムを稼働させるためのITインフラ及びシンクライアントシステムの構築プロジェクトを受注した。

 基幹系システムは、最大都市ヤンゴンに建設するコンテナ型データセンター(DC)内に構築する。ミャンマー中央銀行は、本店を構える首都ネピドーと、ヤンゴン及びマンダレーにそれぞれ支店を持っている。各拠点の職員はネットワーク越しに、基幹系システムを利用する予定だ。

 ASEANに進出する日系企業の間では、現地法人で運用するシステムは最小限に抑え、日本の本社やASEANの地域統括拠点に設置した基幹系システムをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型で利用する形態が広がりつつある(関連記事:[1]クラウド導入にアクセル、トヨタとホンダのアジアIT戦略(前編))。

 しかし、ASEANの官公庁やローカル企業におけるクラウドの普及率は、シンガポールなどを除いてまだ低い。特にミャンマーのICT環境は、他のASEAN諸国に比べても遅れを取っている(写真1)。だからこそ大和総研は、クラウドの導入に踏み切った。その理由は三つある。

写真1●最大都市ヤンゴンの様子
写真1●最大都市ヤンゴンの様子
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