「グローバル」、「リージョン」、「ローカル」という3階層で標準化に取り組むのは、トヨタも同じだ。現在、AP地域統括会社のトヨタモーターアジアパシフィックエンジニアリングアンドマニュファクチャリング(TMAPEM)が指揮を執り、「リージョン」における開発標準の作成と適用に注力している(図1)。

図1●トヨタのアジア太平洋地域におけるシステム標準化や情報共有の取り組み
図1●トヨタのアジア太平洋地域におけるシステム標準化や情報共有の取り組み
12の国と地域の代表者が議論する
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アジアはあえて.NETを標準に

 注目すべきは、AP地域独自の開発標準として、Windowsベースの.「NETフレームワーク」を採用したことだ。トヨタには全世界でUNIXベースの開発標準が既に存在するにも関わらずである。ここには、ホンダと同様に、AP地域固有の事情がある。UNIXが分かる技術者が、他地域よりも圧倒的に少ないのだ。扱える技術者がいない技術で開発標準を作ってしまっては、それこそ絵に描いた餅になってしまう。

 だからといって開発手法を各国任せにしてしまうと、AP地域で統一的な戦略を採りにくくなる。そこで、「AP地域の実情に合った、独自の開発標準をあえて作成することを決めた」。TMAP-EMでIT責任者を務める古田朋司ヴァイスプレジデントは明かす。

「世界の底上げにつながる」

 TMAP-EMは開発標準の策定だけでなく、標準を各拠点が使いこなすための工夫も凝らす。

 例えば、開発標準の策定プロセスに各拠点のIT担当者を参加させている。これにより、各国の実情に即した開発標準を作り上げた。具体的にはAP地域の8社でコミッティを組成。テーマごとにワーキングチームが素案を作り、それをTMAP-EMとコミッティが審査して、標準として盛り込むかどうかを決めるフローを確立した。

 現在は、開発標準を各拠点に根付かせる施策に臨んでいる。適用状況についてのKPI(重要業績指標)を拠点ごとに定め、モニタリングし、適用度が低い場合は改善に向けた支援をする。