ITをビジネスのスピードに追随させられるか―。全ての企業にとっての課題であり、CIO(最高情報責任者)の最大の悩みでもある。新興国など成長市場を攻める時ほど、その悩みは深くなる。

この難題を解くヒントが、トヨタ自動車とホンダの取り組みにある。
日本を代表するグローバル企業の両社はアジアでクラウドの導入を進め、「成長市場」に適したシステム整備を加速させている。

 車であふれるタイの首都バンコク市内。この国の自動車市場で、日本車のシェアはおよそ9割と圧倒的な強さを誇る。

 タイだけではない。インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、シンガポールを含むASEAN主要6カ国における年間の新車販売台数約350万台のうち、日本勢は全体の75%を占める。中でもトヨタ自動車とホンダは、2社で合計40%のシェアを握る“ツートップ”だ。

 ASEANを含むアジア市場は、両社が売り上げを最も伸ばしている地域である(図1)。直近ではタイの政情不安などによる一時的な販売減速があるものの、他地域に比べれば総じて好調であることに変わりはない。

図1●トヨタ自動車とホンダの、地域別に見た売上高の伸び率とアジアでのIT施策
図1●トヨタ自動車とホンダの、地域別に見た売上高の伸び率とアジアでのIT施策
スピード重視でクラウド導入を加速
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 急成長市場だけに、ビジネスもスピードが命。そこで両社は今、アジア太平洋(AP)地域でプライベートクラウドの構築・導入にアクセルを踏んでいる。ビジネスの変化に合わせて、AP全域のシステムを統一的かつダイナミックに変更できるようにするのが狙いである。