東芝 社会インフラシステム社の鎌田恵一氏(府中社会インフラシステム工場 鉄道システム部 主幹)は、2014年7月10日に開催された「第3回 Ethernetが変えるクルマの世界~鉄道、産業機器にも拡がる~」(主催:日経エレクトロニクス)で講演。鉄道車両へのEthernetの適用状況や、国際標準化の動きを紹介した。

 鉄道車両では、これまでも専用ネットワークで車両内の情報伝送を行ってきたが、伝送の高速化・大容量化や鉄道車両の高機能化などに向けて、近年ではEthernetの採用が広がりつつある。

 東芝も、国内外の鉄道車両にEthernetを提供している。たとえば、JR西日本の通勤列車である321系や225系には、車両情報制御システム(TCMS:Train Control Monitoring System)を納入した。TCMSは運転台からの操作を各車両のモータやブレーキの制御装置に伝えるもの。JR西日本に納入したのは、データ伝送速度が10Mビット/秒で、昇圧伝送信号方式。ラダー形のトポロジーで通信経路を冗長化している。

 東芝はこのほか、名古屋鉄道の2000系や京成電鉄の新型スカイライナーAE型、阪急電鉄の1000系/7000系の案内表示や車両情報・状態監視など向けにEthernetシステムを納入してきた。海外でも南アフリカや中国の機関車にTCMSが採用されている。

鉄道向けEthernetに求められるもの

 鎌田氏は、こうした鉄道車両用Ethernetの要件を4つ挙げる。リアルタイム性、雑音対策、配線の削減、冗長性の確保だ。リアルタイム性については、送信権(トークン)を巡回させて各ノードに順番に送信権を与えることで(トークンパッシング)、回線が混み合うのを避け、一定時間に一度は各ノードから確実にデータを送れるようにしている。

 鉄道車両の高雑音環境や長いケーブルおよびコネクタ部での信号減衰などへの対策として、昇圧して信号雑音比(S/N比)を向上させている。10Mビット/秒のEthernetの場合で、通常の振幅4.4Vp-pに対して16Vp-pまで高めているという。配線は、10Mビット/秒Ethernetの場合で、通常は4線式(2対)のところを2線式(1対)にして、コストや重さを抑える。冗長性は通信経路をリング形やラダー形にすることで確保している。