トップ自ら首相に手加減のお願いか──。

 米アップルのCEOであるティム・クック氏が初来日し、首相官邸で安倍晋三首相と会談をしたというニュースに接したとき、真っ先にこのフレーズが思い浮かんだ。おそらく、公正取引委員会が8月2日に公開した文書「携帯電話市場における競争政策上の課題について」(http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/aug/160802.html)についての数々の報道において「公取委の標的はアップル」という印象が刷り込まれているからだろう。公取委は、内閣府の外局として内閣総理大臣の所轄の下に設置されているだけに、クック氏自ら安倍晋三首相に公取委の件について「お願い」あるいは「弁明」に出向いたのではないかと想像したわけだ。

 背景を簡単に説明しよう。件の公取委の文書は、端末の「実質ゼロ円」販売と、中古端末が市場に流通しないことへの疑念といった、現在のスマートフォン市場において独占禁止法の観点から問題になりそうな販売手法・行為について指摘している。普通に読むと大手携帯電話事業者3社(MNO)に対して「問題があるので是正してね」と要請しているように見える。ただし、これを素直に受け取ってはいけないようだ。数々の報道によると、その行間には「アップルに対する牽制」が書き込まれているらしい。

12月稼働予定のアップルの研究所。綱島サスティナブルスマートタウン(http://tsunashimasst.com/JP/)にあり、植栽もなされてオープン間近であることがうかがい知れる。居住・ショッピング施設と併設される大規模開発だが、近所に居住する筆者としては、地元経済にどう影響するのか見守りたい(筆者撮影)
12月稼働予定のアップルの研究所。綱島サスティナブルスマートタウン(http://tsunashimasst.com/JP/)にあり、植栽もなされてオープン間近であることがうかがい知れる。居住・ショッピング施設と併設される大規模開発だが、近所に居住する筆者としては、地元経済にどう影響するのか見守りたい(筆者撮影)
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