朝、iPhoneにセットしたアラームで目覚めたその男は、ベッド脇のスツールに手を伸ばした。MagSafeテクノロジーを取り入れた電磁誘導充電装置にピタリと吸い付いたApple Watchを、わずかな磁力にあらがいながら手に取ると、心地よい睡眠の余韻を断ち切るかのような勢いでベッドから這い出した。

 Apple Watchを手慣れた仕草で左腕に装着しながら、寝起きとは思えないしっかりとした足取りで5秒後にはキッチンに置かれた業務用のエスプレッソマシンの前に立ったその男は、4ポンドのステーキを1ガロンのエスプレッソで胃の中に流し込むのが日課である。

 とまあ、何の脈絡もなく大藪春彦風にハードボイルドな雰囲気で始めてみた今回のコラム。毎朝、ベッドから出るとApple Watchを一番に装着する点は「その男」に準ずる筆者だが、その後は愛犬のお散歩に出かけるだけのルーチンな日課が始まる。そんな日々を積み重ねるうち、この話題のウエアラブル端末を使い始めて3カ月が過ぎた。

図1●iPhone経由でwatchOS 2 betaをインストールしている画面。デベロッパープログラムに参加すると、アップルの開発者向けサイトからダウンロードできる
図1●iPhone経由でwatchOS 2 betaをインストールしている画面。デベロッパープログラムに参加すると、アップルの開発者向けサイトからダウンロードできる
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 Apple Watchが空気のような存在になっていることに気づく。ごくたまに時間を確認し、厳選したアプリからの「通知」を受け取り、朝夕の犬の散歩の際に「ワークアウト」アプリを起動する以外は、その存在を意識することは極めて少ない。ウエアラブル端末というのはこういうものなのかと再認識している。

 それと同時に筆者にとってのApple Watchは、ヘルスケアのログ取り端末としての役割が大部分を占めていることにも気づかされる。そんな、Apple Watchがこの秋、大きく進化する。watchOS 2へのアップグレードが予定されているのだ(図1)。アップグレードの内容を見ると、Apple Watchがより強力で高機能なヘルスケア端末へ進化するであろうことがうかがえる。