昨今、VR(仮想現実)と聞くと真っ先に連想するのが、OCULUS Rift、HTC Vive、PlayStation VR(PSVR)などに代表されるHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)による全方位立体映像の世界であろう。初代OCULUS Riftを初体験したときは、すごい時代になったものだと驚愕した(今から思うと貧弱な解像度だったが)。最新のPSVRに至っては、現実と仮想が交錯する世界の狭間で理解が追いつかず頭がクラクラするのを覚えずにはいられない。

 ただ、ともすれば映像にばかり注意が向くVRだが、最大限の没入感を得るためには、立体的に構築された「音」も大きな役割を果たしていることを忘れてはならない。ゴーグルや赤外線センサーによるヘッドトラッキングに追従し、視野の変化とともに音の発する方向や音圧が変化するからこそ、魅惑の仮想現実世界が得られるのだ。視野がグリグリと連続的に変化しているのに、周囲の音がステレオのまま定位していたのではシラケテしまうではないか。VR映像には「VR音響」(立体音響)は必須なのだ。

 YouTubeやFacebookの360度VR動画がVR音響に対応しているのはご存知だろうか。Cardboard対応のVRビューワー(スマートフォンを装着する簡易VRゴーグル)とヘッドフォンを利用することで、VR映像に追従するVR音響を楽しめる。さすがに、HTC ViveやPSVRのリッチなCGコンテンツによる没入感とは比ぶべくもないが、VR音響付きで360度の仮想現実世界が安価かつ気軽に楽しめるのは、覚えておいて損はない。

アマゾンで1000円弱で購入した簡易VRゴーグル。Androidスマートフォンとヘッドフォンを装着すれば、手軽にVRの世界を楽しめる(筆者撮影)
アマゾンで1000円弱で購入した簡易VRゴーグル。Androidスマートフォンとヘッドフォンを装着すれば、手軽にVRの世界を楽しめる(筆者撮影)
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 一方、コンテンツ制作という面でも、比較的安価なコストでVR音響付きのVR動画を作成しYouTubeなどにアップロードできる点も付け加えておきたい。本コラムでは、筆者自らがリコーのRICOH THETA SとZOOMのレコーダーを使ってVR動画の制作にトライしたので、その制作過程で見えてきた課題についても考えてみたい。

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YouTubeのVRに対応した動画には、画面右下にゴーグル型のアイコンが表示される。タップすると二眼映像に切り替わりCardboard対応になる
YouTubeのVRに対応した動画には、画面右下にゴーグル型のアイコンが表示される。タップすると二眼映像に切り替わりCardboard対応になる
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