3Dプリンターがものづくり大国ニッポンを草の根レベルでけん引する――。

 漠然とではあるが筆者が3Dプリンターに抱いていたイメージだ。予算が許せば自宅に1台購入し、内奥(ないおう)に宿るクリエイティビティを炸裂させ、技術立国日本を支える礎の一端を担おうと思っていた。

 だが、今回の取材でその甘い考えは完膚なきまでに叩きのめされ、もろくも崩れ去ってしまった。3Dプリンターでものを作ることが、これほどまでに面倒で手間のかかることだとはつゆ知らず、生来ずぼらな筆者の、明日の日本を憂う壮大な志は早々に頓挫したのだった。

 と、今回はいつになく大上段に構えた書き出しで始まった本コラム、何が言いたいのかというと、最近の3Dプリンター事情を3Dプリント経験が皆無の素人目線でお伝えしようというものだ。

 前述したようにいきなり挫折してしまった筆者だが、3Dプリンターの可能性には多いに感じ入るものがあったのも事実。出力に至るまでが「面倒で手間がかかる」ものの、3Dプリンターは確実に進化し、価格も低廉化していることが理解できた。遠からず老若男女が気軽に3Dプリントを楽しむ時代が来ることを確信している。

 今回、取材したのは、日本3Dプリンター副社長の劉宇陽氏と同社顧問の原島広至氏。通されたオフィス奥の部屋には、いろいろな種類の3Dプリンターが所狭しと並んでいる。

 今回の取材で見たのは、同社が輸入販売する中国Tiertime Technologyの「UP BOX」という最新のイチオシ機種だ(写真1)。読売巨人軍のチームカラーを連想させるブラックとオレンジのボディーに大きく開いた窓から青白い光が妖しく漏れ、背後の障子とのコントラストがミスマッチの妙を醸し出している。

写真1●中国Tiertime Technologyの「UP BOX」。劉副社長が気を利かせて「写真を撮るなら」と置いてくれたのは、3D出力した布袋様のフィギュア
写真1●中国Tiertime Technologyの「UP BOX」。劉副社長が気を利かせて「写真を撮るなら」と置いてくれたのは、3D出力した布袋様のフィギュア
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