NTTグループにとって宿願だったろう、携帯電話と固定回線をセットにして割り引く「ドコモ光」(いわゆる「セット割」)を2015年2月にNTTドコモが提供を始める予定だ。NTT東日本・西日本の光回線とNTTドコモの携帯電話を組み合わせて実現するセット割は、これまで「電気通信事業法第30条」の存在によりNTTが提供を「見合わせてきた」経緯がある。

 同法第30条には、禁止行為規制と呼ばれるルールが定めてある。その中で一定の市場占有率を超える通信事業者(具体的にはNTT東西とNTTドコモ)に対し「その電気通信業務について、特定の電気通信事業者に対し、不当に優先的な取扱いをし、若しくは利益を与え、又は不当に不利な取扱いをし、若しくは不利益を与えること」を禁止している。つまり、NTT東西とNTTドコモが協業し光回線と携帯電話をセットにして提供するのなら、競合他社にも光回線を同じ条件で提供しなければならい、という制約がかけられているのだ。

 NTTからすると、ライバルにも同条件で光回線を提供したのでは、シェアの高いNTT東西の光回線に競合サービスが横並びになり、NTTとしての優位性を持たせることができなくなる。こうした事情から、セット割の提供を「見合わせてきた」のである。

 NTTグループがセット割導入を望んでいたことは、2012年に始まったKDDI版のセット割「auスマートバリュー」に対する数々の公開情報から想像できる。例えば、総務省に提出するパブリックコメント(パブコメ)でauスマートバリューについて、グループを挙げてコメントを残している。2012年4月に公開された『電気通信事業法第30条第1項の規定に基づく禁止行為等の規定の適用を受ける電気通信事業者(移動通信分野における市場支配的な電気通信事業者)の指定に当たっての基本的考え方(案)』に対するパブコメでは、NTT持株会社が次の意見を述べている。

禁止行為規制が適用されていないKDDI殿が特定の固定通信事業者のサービスと自社の携帯電話サービスを組み合わせたセット割引を提供開始したものの、禁止行為規制が適用されているNTTドコモは、ある特定の電気通信事業者と提携して柔軟にサービスを展開することができず、利用者利便が損なわれている恐れがあります。