ふじ・カプリスは、1959年に東京・代々木駅近くで創業し、50年以上の実績を誇る老舗(しにせ)エステサロンである。同社代表取締役の奈良直美氏は、英米のインターナショナルエステティシャンの資格を持ち、長年蓄積してきた技術と経験を基に、「有機栽培のような個人サロン」を目指している(写真1)。

 創業当時は、有閑マダムなど富裕層向けの印象が強かったエステサロンだが、今やOLや学生から小学生までが通うほど大衆化し、激しい競争が起きている。その中、同社は母の店を引き継いだ奈良氏(写真2)を中心に、独自技術の提供と、「IT経営」の推進を背景とした「『個客』指向サービス」によって、増収増益を続けている。

写真1●ふじ・カプリスの店舗
写真1●ふじ・カプリスの店舗
写真2●代表取締役の奈良直美氏
写真2●代表取締役の奈良直美氏

 特徴は、固定的なコースやメニューを顧客に押しつけないことだ。顧客と話し合い、顧客の状態を把握した上で「じっくり1対1で対応し、結果の出る施術をお勧めする」ことを基本に「和洋中」をミックスしたオリジナルな技術(2014年時点で200種類以上)を提供し続けるほか、効果の高い国内美容製品の発掘に努めている。

 綿密で多彩なサービスを行うため、スタッフの勉強は欠かせない。その一方で、顧客の予算に合わせて5分単位できめ細かく予約を受け付けており、今では顧客の娘・孫世代までが固定客になっている。スタッフの大半が同社の顧客や大手サロンの顧客・スタッフからの転向者で占められていることも、同社の「個客」指向サービスが顧客の評価を得ている証左と言える。

IT経営で三つの課題に対処

 しかし、「IT経営」をスタートした2005年以前は、同社もいくつかの課題に悩んでいた。主なものは以下の三つである。

(1)フロントに受け付け専門スタッフがいない
 当時、スタッフは奈良氏のほかアルバイト2人で、施術(痩身術)中は、顧客からの電話に出ることができなかった。

(2)予約状況がすぐに把握できない

写真3●以前利用していたバインダー(紙)の予約帳
写真3●以前利用していたバインダー(紙)の予約帳
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 完全予約制を採りながらバインダー(紙)の予約帳をスケジュール管理に利用していた。記載内容もクセ字や書き直しで読みにくかった(写真3)。一覧性や検索性も悪く、顧客と次回の日取りを決めるときなども、予約状況を簡単に確認することができなかった。

(3)DM(ダイレクトメール)発送の時期が遅れやすい
 DMの送付対象としたい顧客の住所を手書きの顧客カルテから抽出しており、作業に予想以上の時間がかかっていた。

 同社はこうした課題を、パソコンやインターネットといったITで解決できると漠然と考えていたが、身近に適切な相談相手がおらず、悩んでいたという。