ISOWAがプロジェクトへの参画を通じて鍛えてきた社員の「考える力」というのは、知識として習得されたものではないことを知っておく必要がある。座学でスキルや知識をいくら詰め込んでも、現実の仕事の場面では、それに投下した労力やコストに見合うほどには力が発揮されないものである。

 また、ロジカルに考えるスキルを勉強したとしても、それだけで考える力が飛躍的に高まることもない。

 というのも、考える力は、

    (1)考えざるを得ない環境とそこに立ってきたアンテナに集まってくる情報
    (2)物事の意味や目的をしっかりと腹に落としながら考え抜いていく姿勢(それによってもたらされる視野の広さ)
    (3)チームで知恵を出し、気づくきっかけをつくる試行錯誤のプロセス

があって初めて身に付くものだからだ。

2年間議論し続けた社員満足度調査

 ISOWAで行われているプロジェクトはどれも、こうした試行錯誤を盛り込んだ話し合いを重視してきている。「話し合いを重視する」と言うだけなら、大抵の会社が同じことを言っているから、何の変哲もない。しかし、ISOWAでの話し合いの中身は決定的に違う。「遠慮のないやりとりができる仲間」と「時間」をかけて「何のために、どういう意味があるのか」を、とことん話し合っているのだ。

 例えば、社員満足度調査を実施するプロジェクトとして2007年に始まった「MANZOKU調査隊」は、その調査項目を決めるまでに2年弱にわたって話し合いを続けてきた。意思決定できないという理由で、ただダラダラと話し合いを続けてきたのではない。「そもそも、と根源まで考え抜こう」という姿勢が一貫していたということだ。

 調査をどうやるかという手段から議論に入るのではなく、「そもそも何のために社員満足の調査をするのか」という問いに始まり、「社員満足とはいったい何か」「社員が満足するとはどういうことなのか」などを繰り返し話し合う。ときには「会社で働くとは一体どういうことなのか」「会社とは何か」「会社と社会との関係とは何なのか」といった、入社してから今日に至るまで真正面から考えたことがなかったことまで議論した。