9年前にスタートしたISOWAの改革は、ゆっくりとしたペースではあるが着実に、考え抜く習慣を身に付けた社員を増やしている。社員数が300人弱の会社だから、1人ずつでもそういう社員が増えていくと、会社が持つポテンシャルが底上げされていることが実感できる。

 社長発の改革は、社長自身の軸がブレないとき、やり方さえ間違わなければその成功の確率は極めて高い。逆にやり方を間違ってしまうと、社長の独り善がりに陥って失敗してしまう危険性も同じくらい高い。

 社長という存在は、それがどんなに優れた(手腕という意味でも人格という意味でも)人物であっても、裸の王様になる危険性を常に色濃く持っているものだ。私の経験から言えるのは、自分をさらけ出すことができる社長は比較的、その危険性から逃れやすい。そして、ISOWAの磯輪社長は間違いなくそのタイプである。

7つの項目で社員が社長を評価

 磯輪社長は「ブレないこと」「経営情報をオープンにすること」に加え、社長になったときから年に一回、社員が無記名で任意に社長を評価するという「社長の評価制度」を取り入れた。社員から受けた評価を基に、自分自身の言動を反省しようというのである。
 社長が社員を評価するのは普通だが、社員が社長を評価する仕組みというのはあまり聞かない話だ。しかも、その結果を秘密事項にしないとなると、私はいまだかつて聞いたことがない。

 磯輪社長も当初はどんな結果になるのか不安で、何度もやめようかと悩んだらしい。しかし、管理職の評価制度をすっかりつくり替えたことをきっかけに、腹をくくって自分自身(社長)の評価制度も導入することにした。

 管理職の評価をがらりと替えたとき、数値実績とか業績の項目を一切なくした。外部環境に大きく左右される短期的な業績を基にして評価するのではなく、長期的な業績につながる“スピードと対話”をベースに、「方向性を打ち出し、責任を持って決め、推進する力」と「対話力」の二面で評価することにした(現在はさらに進化している)。