スマートフォンで法人向けのFMCを活用する利点は主に2つある。場所を問わず業務連絡が可能になり生産性向上につながることと、通信インフラや通話費への支出額を削減できることである。

 この観点から企業がFMCをどう活用しているかをサンネット、日本アジアグループ、ヤブ原の3社の事例から紹介する。いずれも具体的な効果が出ているものだ。

サンネット
FMCなら「公私の区別」ができる

 中堅システム開発のサンネットは、社員の生産性向上を重視して、スマホを使ったFMCを導入した。同社は技術者の7~8割が常時、顧客先に常駐してシステム開発に携わっている。場所を問わず社員同士が連絡を取ったり、顧客からの連絡に対応したりできるようにして業務の効率を上げる狙いだ。

 ただし導入を推進した市川聡社長は、「『時間を問わず仕事をする』ためでなく、むしろ『業務と生活時間をしっかり区別させる』ためのFMC導入だった」と話す。携帯電話を業務に使うと、時間に関係なく顧客との連絡に追われる社員もいる。FMCを使うことで顧客との連絡で仕事漬けになる恐れを取り除く。さらに社内コミュニケーションも活性化させて、社員の働きやすさを高めるという狙いだ。

 このため、FMCは使い方や設定にも注意を払った。FMCの主な利用目的は(1)会社に来た顧客からの電話を駐在先などにいる社員に転送する、(2)社員から顧客先に連絡を取る、(3)社員同士が内線で連絡を取る─などである(図1)。なお、FMCにはエス・アンド・アイ(S&I)の「uniConnect」を採用した。スマホ用のアプリと企業内に置くPBXや呼制御サーバーを組み合わせる製品で、音声通話は3Gの音声回線を使っている

図1●スマホを使った内線電話システムの仕組みと導入効果
図1●スマホを使った内線電話システムの仕組みと導入効果
社内コミュニケーションの活性化や職場環境の向上を狙ったサンネットの例。顧客先に携帯電話の番号を伏せたまま、社外にいる社員に電話を転送できる利便性も高く評価した。エス・アンド・アイ(S&I )の「uniConnect」を採用した。
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