マイナンバーの医療分野での活用は、熱い視線を集めている。医療費を含む社会保障費は31兆円を超え、すぐにでもコスト削減の手を打たなければならない状況になっている。実際に、かなりのコスト削減が期待できるとする試算もある。一方で、マイナンバーの医療分野への活用に慎重な人々もいる。慎重派は、セキュリティ面を危惧している。もし病歴が漏れたとしたら、通常の個人情報漏洩どころではない被害を受ける可能性がある、と憂慮しているのだ。果たして、医療分野へのマイナンバー導入は、どうあるべきなのか。

 今年度から自治体でのシステム整備が本格化するマイナンバー制度は、2015年10月には個人への番号の通知が始まり、2016年1月からスタートする。マイナンバーの利用分野は、当初は税と社会保障、災害対策の3分野に限られる。2015年10月の法施行後3年をめどに、「個人番号の利用範囲の拡大」が検討されることになっている。

 しかしこの日程では、実際に利用拡大が実現するのは2020年を過ぎてしまう。そこで、マイナンバー利用拡大推進のために、政府は6月に新しい「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定。マイナンバーの利用範囲の拡大や制度基盤の活用として、特に(1)戸籍事務、(2)旅券事務、(3)預貯金口座への付番、(4)医療・介護・健康情報の管理・連携、(5)自動車検査登録事務――の5分野を取り上げ、検討状況を2014年秋までに政府CIOに報告することになった(関連記事:導入前から“利用拡大”にらんだ動き、マイナンバー他分野活用決定を早めては?)。

コスト削減目的に医療マイナンバー活用の動き

 特に、医療分野での活用は、熱い視線を集めている。医療費を含む社会保障費は31兆円を超え、すぐにでもコスト削減の手を打たなければならない状況になっている。実際に、マイナンバー、あるいはそれと連携した医療用符号を活用することで、かなりのコスト削減が期待できるとする試算もある。

 例えば、日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会(JUMP)は、電子お薬手帳などによる75歳以上の高齢者の薬の飲み残し削減(推定年475億円)、重複投薬の適正化(年間1400万件、院外処方の2~3%)、創薬・治験での被験者選出の際の精度向上と最適化(1治験当たり5~15億円)、人工透析患者20%減で年間350億円の医療費削減など、様々な数値をはじき出している(関連記事:医療マイナンバーの活用を強く主張、日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会(JUMP)が会見)。