呼気で肺がんを診断する――。苦痛や不快感を伴わない、そんながん診断法への取り組みをパナソニックが語った(関連記事1)。“がん探知犬”をデバイスで置き換える試みだ。

 「第18回 国際福祉健康産業展 ウェルフェア2015」(2015年5月21~23日、名古屋市国際展示場)の「医工連携シンポジウム 医工連携で実現する病気を知り健康を守る最先端科学技術」では、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 技術本部 バイオセンシング開発部 部長の岡弘章氏が登壇。「呼気で病気を知り健康を守る ~呼気診断~」と題して講演した。

まずは尿に着目

岡氏による講演の様子
岡氏による講演の様子
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 パナソニックは2000年代前半から、病気の呼気診断に関心を寄せてきたという。特に「インパクトが大きいのは(患者数や死亡者数の多い)肺がんと乳がんと見定め、高い精度の呼気診断を実現できれば死亡者を減らせると考えた」(岡氏)。バイオマーカーとして呼気に含まれる揮発性低分子に着目したが、当初はなかなか良いマーカーが見つからなかった。

 そこで、まずは呼気ではなく尿に含まれる揮発成分を調べた。呼気に比べてサンプルを集めやすいことに加え、尿中の揮発成分は「呼気に含まれるものとほぼ同じ」(同氏)だからだ。実験には、マウスを利用した。マウスが犬よりも優れるとも言われる嗅覚を持つことを利用し、水を報酬に訓練して“がん探知マウス”を育てた。

 4カ月の訓練後には、肺がん患者の尿と健常者の尿を80%の正答率で識別できるようになったという。この結果から、尿中には肺がんに特異的な揮発性化合物が存在することが分かった。